今日は10月5日、小生の誕生日である。朝っぱらから祝メールをくれた旧友がいて、よくぞ憶えていてくれたものだと感激。折悪しく颱風が接近し、篠つく雨が降りやみそうもない。「こんな日にわざわざ出かけるなんて」と呆れ顔を家人を尻目に外出を決行。JR、地下鉄、西武線と乗り継いで富士見台に馴染のインドカレー屋「
香菜軒」を訪ねる。店主の三浦勉さんもまた今日が誕生日なのだ。だから毎年ここを訪ねて一緒に祝う。小生は彼よりきっかり十歳上なので、それぞれ六十二、五十二になったところ。気がつくとお互いもういい歳だ。
三浦さんはいろいろ無理からぬ事情があるそうで、今年一杯で店をたたむ決心をしたのだという。開店から二十年、この店でしか味わえない絶妙な料理の数々と、選び抜かれた食材のよさに惚れ込んだファンが大勢できたというのに勿体ない、全くもって残念至極な話である。
こういう日に手ぶらで見参という訳にもいかないだろうから、予め地元のスーパーで「
喜楽長 辛口 純米吟醸」の小壜を買い求めた。富士見台到着は三時少し前。ランチタイムの営業が終わる頃合を見計らって扉をそっと開いた。
まずは持参した酒でカウンター越しに祝杯を挙げる。営業時間外なので、まあいいだろう。いつも気のつく三浦夫人がツマミを見繕って出してくれた。どれもこれもたいそう旨いのは、ここでは毎度のことなのだが感動する。
閉店はつくづく残念だと告げたら、「年内ぎりぎりまで店を開くので、ぜひ来てほしい」とのこと。足繁く通わねばなるまい。今後の予定を尋ねると、いずれ鎌倉の実家の一郭を店に改造して、別の形で再開したいとのこと。ただし再出発は新生活が軌道に乗ってからなので、しばらく後になりそうだ。
四方山話に花を咲かせていたら、「
きっと今日お見えになるだろうと、残しておきました」とキーマカレーの一皿を差し出される。小生が二十年前、初めてこの店を訪れた際に註文したメニューである。実に美味しい。あのときも旨いと思ったが、あれとこれとが果たして同じ味なのかは、もう誰にも確かめようがない。
四時半少し前に辞去。香菜軒ではこのあと夜の仕込みもあるだろうに、休憩時間に押しかけた不躾な客で三浦夫妻には申し訳なかった。復路は同じ路線を逆向きに辿り、帰宅すると六時を少しだけ回った。
interFMにダイアルを合わせ(←慣用句)今日から再開された「
バラカン・ビート」を聴く。朝でないのがちょっと不思議な気がするが、じきに馴れて違和感は失せ、「名盤片面」コーナーでマディ・ウォーターズがかかったのに快哉を叫ぶ。最後にダーティ・ダズン・ブラス・バンドの "Big Chief" が流れたのは毎朝の聴取者たちへの目配せだろう。