昨晩は颱風の影響か雨に祟られて中秋の名月はさつぱり拝めず仕舞ひ。尤もこれは關東に限つた話であり、友人達の報告に據れば尾張名古屋では「濡れたやうに美しい」十五夜が觀られたさうだし、遠く地球の裏側のウィーンやカウナスでも頭上には見事な完全無缺のフルムーンが煌々と照り映えた由。
さて一夜明けると今日は空模樣も上乘、夕刻からは雲もあらかた退いて、今時分はもう十六夜の月が空高く上つた頃合だらう。という譯でヴェランダから見上げると、實に天晴な月夜である。しかも幾ら目を凝らしても滿月と見紛ふばかり、望月の隈なきを愛づるのと毫も變はる處がない。十五夜だと云はれゝばそのまゝ信じてしまいさうな程だ。薄も團子も用意がないが、今宵は獨り靜かに月見と參らう。