常になく四時半に目が覚めたら外がもう薄明るい。それもそのはずラヂオを点けたら今日は夏至の日だと告げられた。薄曇りながら雨は免れそうと聞き、「ウィークエンド・サンシャイン」が終わるや、暑くならぬうちに家を出てJRと地下鉄二本を乗り継いで清澄白河へ。かねて家人の希望していた
清澄庭園が今日の目的地だ。期待した花菖蒲の群生は思いのほか小規模だったが、あちこち奇岩巨石を配した庭園には風雅な趣があり、池には鯉と亀と鼈、それに珍しくも青鷺の姿まで見られた。これで園内に眺めのよい茶店があれば申し分ないのだが。
近くの蕎麦屋で小ざっぱり昼食を摂ったあとは
深川江戸資料館へ。この界隈の天保年間を想定した原寸大の街並復元が実に見事。八百屋や米屋や船宿の室内に上がりこんで江戸情緒に浸る。一時間半ほどして表に出たら、午後の茹だるような蒸し暑さで気が遠くなりそう。這う這うの体で地下鉄駅に逃げ帰る。
帰宅は三時半。ちょっとぐったりしたので遅い午睡。七時に目覚めたらまだ空にはうっすら残照が残っている。夏至の一日を雨に祟られずに過ごせたのは幸いだった。今日という日に感謝しながら、この一枚を。
メンデルスゾーン:
劇音楽《真夏の夜の夢》 (ほぼ全曲)
ソプラノ/アーリーン・オージェ
メゾソプラノ/アン・マリー
合唱/アンブロジアン・シンガーズ
ネヴィル・マリナー指揮
フィルハーモニア管弦楽団1983年3月16~17日、ロンドン、キングズウェイ・ホール
Philips 411 106-2 (1984)
→アルバム・カヴァー4月15日のネヴィル卿の九十歳の誕生日を壽いで架蔵する二十点のディスクを一気に纏め聴きした際(
→ここ)、わざと省いた一枚である。折角だから夏至の当日に聴こうと取り除けておいたのだ。
珍しくも手兵アカデミー・オヴ・セント・マーティン=イン=ザ=フィールズではなく英京フィルハーモニア管弦楽団(彼が若き日にヴァイオリニストとして奉職した団体)を振っているのが珍しく、その分いくらか遠慮気味なところもないではないが、穏和だが気品があって、夢幻的な味わいにも欠けていない佳演といえるだろう。こういう良質な演奏が市場から消えて久しいのは残念だ。まあフィリップスが会社ごと消滅してしまったのだから致し方ないのであるが。