今朝も好天に恵まれた。おまけに寒さも和らいで絶好の外出日和。朝起きして珈琲で眠気を醒まし家を出る。今日と明日は亀戸天神の
鷽替神事の日だ。毎年この二日間だけ鷽(うそ)を象った愛らしい木彫(
→これ)が配られる。
「旧年の悪しきを嘘(鷽)となし、吉に取り替えて新年の多幸を希う」というのが本意らしいが、学問の神様のお守り故、受験生がいる家では願懸けに恰好である。拙宅も高校を受ける姪が親戚にいるので、小生が名代として亀戸まで出向こうという次第だ。配布開始は朝の十時。鷽の数はたっぷり用意されているから急ぐことはないが、できれば行列が長くならないうちに末尾に附きたい。
亀戸駅北口から駅前商店街を真っ直ぐ北上。五分ほどして蔵前橋通りに出たら交叉点を左折。そこから更に三分ほど直進すると天神様への入口に着く。昔から何度となく通い馴れたルートだし、昨年も大学受験の甥っ子のため鷽替に来たので勝手知ったる道筋なのだが、どうしても気が急いて早足になる。
天神の境内に着いたのは十時半を少し回った頃合。正面の鳥居を潜るとすぐに左折、案内に従ってしばらく進むと列の末尾が見えた。昨年もそうだったが、列には既に数百人が並んでいて、交通渋滞さながら遅々として進まず、時に思い出したようにゆるゆる前進するばかり。退屈なので周囲を見渡すと境内の梅は蕾も膨らみ、咲き始めたのもチラホラ。青空を背にスカイツリーがくっきり間近に見える。幸いにも一月にしては陽射しが暖かく、照らされた背中は仄かにポカポカ温もる。とはいえ、朝っぱらから冬の戸外に立ち通しは楽ぢゃない。なあにこれしき、なにせ当方は同じこの季節、厳寒の早朝の倫敦で「レオナルド展」の当日券の列に五時間も並んだ「剛の者」なのだと独白してみる(
→レオナルド・ダ・ヴィンチ探索)。
牛歩の如くじりじり進むこと一時間半近く、足先が冷え切った頃ようやく鷽替の順番が巡ってきた。引換所にずらり並ぶ木彫りの鷽(
→これ)は爪楊枝みたいのから棍棒大のまで十一種類あり、今回は昨年のより一回り大きいのを所望した。初穂料と引き換えに受け取ると、傍らの本殿に恭しく一礼して辞去。境内の正面に戻ると列はさっきより延びて鳥居の辺りまで来ていたから、今からだと二時間近く待たされるだろう。早起きした甲斐があったというものだ。
さすがに体が芯まで冷えたので門前にある和菓子の老舗「船橋屋」で小休止、昼食代わりの白玉汁粉でしばし温もる。ついでに土産に名物の葛餅も購う。そのあと散策がてら蔵前橋通りを一駅先の錦糸町まで歩いた。まだ少し余力があったので御茶ノ水で時間を潰してから帰途に就く。うって変わって午後はどんより曇天。