というわけで2014年は作曲家の生歿年に関する限り、あまりパッとしない年ということになりそうである。欧州人にとっては天下の一大事である「1914年」も極東の島国に身を置くわれわれには節目の年としてはどうもピンと来ない。
ところが目を指揮者に転ずると、これが凄いことになっている。1914年生まれの優秀なコンダクターが目白押しなのである。
1914年
ヴィトルド・ロヴィツキ ポーランド(2月26日、ダガンログ生まれ)
キリル・コンドラシン ロシア(3月6日、モスクワ生まれ)
カルロ・マリーア・ジュリーニ イタリア(5月9日、バルレッタ生まれ)
ラファエル・クベリーク チェコ(6月29日、ビーホリー生まれ)
フェレンツ・フリッチャイ ハンガリー(8月9日、ブダペスト生まれ)
アルヴィド・ヤンソンス ラトヴィア(10月24日、リエパーヤ生まれ)このほかクルト・ヴェス、ウィリアム・ストリックランド、ロジェ・ワーグナー、フレデリック・フェネルらも同年の生まれである。
まるで申し合わせたように同じ年に時代を劃す個性的な名コンダクターが各国で相次いで誕生している。単なる偶然といってしまえばそれまでで、そこに確たる理由などあろう筈もないのだが、指揮界に関する限り1914年を大いなる当たり年と呼ぶことに異論はなかろう(前年の1913年生まれの指揮者ではジャン・フルネ、ルネ・レボヴィッツ、ウォルター・サスキンド位しか思いつかない)。
同じ年に生まれたという共通項だけで括るのはどうかと思うが、それでも彼らは第一次大戦時に幼年期を過ごし(戦乱の記憶は殆どなかろう)、戦間期に自己形成を遂げたのち、二十代後半から三十歳にかけて第二次大戦に遭遇した(その体験は各人のキャリアに大きな刻印を残しただろう)という出自をもつ彼らには、何かしら共通した相貌があるように感じられるのは、小生の思い過ごしだろうか。