昨日はバレエ・リュスについて三時間もぶっ通しでしゃべったので疲労困憊。泥のように眠った。寝ぼけまなこでラヂオを点けると懐かしくも絢爛たる響きが耳に届いた。うつらうつら聴くとはなしに聴いていて、おお、これは、と覚醒する。合間合間に皆川達夫さんの懇切な解説が入る。云わずと知れた長寿番組「音楽の泉」である。小生が子供の頃に愛聴していた時分は堀内敬三翁が解説していたっけ。
AM放送なので今一つ音は良くないが、精度の高い光彩陸離たる演奏であることは一聴瞭然。間違いなくブーレーズの指揮だろうと見当をつける。ただし架蔵するNYフィル盤とは明らかに違う。刃物のような鋭い切れ味は後退し、明快だがまろやかで芳醇な響きがする。最後のアナウンスで演奏者が明かされた。
ストラヴィンスキー: 「火の鳥」全曲
ピエール・ブーレーズ指揮
シカゴ交響楽団
なるほどね、1992年の録音だそうだ。昔々、パリ管弦楽団と来日したセルジュ・ボードはブーレーズのドビュッシー演奏について問われると、「彼はここ(と頭を指差して)で指揮するが、僕はここ(心臓)で指揮する」と答えたものだが、どうしてどうして、このシカゴでの録音ではブーレーズは頭脳とハートを無理なく連動させ、感動的なストラヴィンスキーを現出させている。