夜半からの雨は一旦やんだが、正午前後に再びしとしと降り出した。リヒャルト・シュトラウスの歌曲「九月」の歌詞に似つかわしい秘めやかな秋の日。
なので昨晩に引き続き、心静かに孤高の天才ピアニストを聴くことにしよう。
"The Glenn Gould Silver Jubilee Album"
バッハ:
イタリア協奏曲*
スカルラッティ:
ソナタ ニ長調 K.430**、ニ短調 K.9***、ト短調 K.13**
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ:
ヴュルテンベルク・ソナタ 第一番 イ短調**
グレン・グールド:
だからフーガを書いてみない?****
スクリャービン:
二つの小品 作品57*****
リヒャルト・シュトラウス:
オフィーリアの歌 作品67******
ベートーヴェン(リスト編):
田園交響曲 第一楽章*******
ピアノ/グレン・グールド
ヴラジーミル・ゴルシュマン指揮
独唱アンサンブル、ジュリアード四重奏団****
ソプラノ/エリーザベト・シュヴァルツコップ*****
1981年8月29~30日、トロント、イートンズ・オーディトリアム*
1968年1月30日、ニューヨーク、コロンビア30丁目スタジオ**
1968年2月6日、ニューヨーク、コロンビア30丁目スタジオ***
1963年12月14日、ニューヨーク、コロンビア30丁目スタジオ****
1972年12月13日、トロント、イートンズ・オーディトリアム*****
1966年1月14~15日、ニューヨーク、コロンビア30丁目スタジオ******
1968年7月30日~8月1日、ニューヨーク、コロンビア30丁目スタジオ*******
Sony S2K 60686 (1980/1994)
「シルヴァー・ジュビリー」とは二十五周年の祝いの意。すなわち
グレン・グールドが「ゴルトベルク変奏曲」で米コロンビア・レコーズからデビューしてきっかり四半世紀になった節目の年の記念アルバムなのである。本国ではLP二枚組で出たが、日本盤は(当時の感覚では不可解な)カナダでのラジオ番組(グールド製作)を割愛して一枚物として発売された。
歿後に出たCDは二枚組。全内容を復活させたうえ、冒頭に未編集だった最晩年の「イタリア協奏曲」録音を新たに追加した形。そこから一枚目のみを聴く。
その年、1980年には日本でも三つの記念盤が同時に出た。昨日ここで聴いた「バッハ:前奏曲、フーガ、小フーガ集」、ベートーヴェンのソナタ集(第一、二、三、十五番)の新録音二枚組、そしてこの「シルヴァー・ジュビリー」の三組だ。耳にしたのは殆ど同時期だったと思う。噂には聞いていた未発表のシュヴァルツコップとの共演録音が最大の目玉だった。聴くまでは想像もできぬ驚きの音源である。
そのときは期待が過大だったせいか、シュヴァルツコップとの共同作業はどうも呼吸が合わないというか、協調するところ少なく、なんだか肩透かしを喰らったような塩梅だった。その印象は今も変わらない。結局この世紀のセッションは途中で両者が決裂して未完のまま終わったというのも宜なるかな、甚だ不本意な出来だ。
(まだ聴き出し)