(承前)
八月末に聴きかけたままレヴューを途中で放置してあった
シャルル・ケックランのディスクの続きを聴こう。今度こそ最後まで。
"Charles Koechlin: Magicien orchestrateur"
クロード・ドビュッシー(シャルル・ケックラン編):
バレエ音楽「カンマ」
キャサリン・アーナー(シャルル・ケックラン編):
遠い波の上で
ガブリエル・フォーレ(シャルル・ケックラン編):
劇音楽「ペレアスとメリザンド」*
フランツ・シューベルト(シャルル・ケックラン編):
バレエ音楽「さすらい人」**
エマニュエル・シャブリエ(シャルル・ケックラン編):
気紛れなブーレ
ハインツ・ホリガー指揮
シュトゥットガルト南西ドイツ放送交響楽団
ソプラノ/ザラー・ヴェーゲナー*
ピアノ/フロリアン・ヘルシャー**
2010年11月2~5日、シュトゥットガルト、南西ドイツ放送(SWR)スタジオ
2010年11月8日、ジンデルフィンゲン、市会堂(「カンマ」「気紛れなブーレ」)
Hänssler CD 93.286 (2012)
新たに評するのはお終いの二曲。いずれも世界初録音である。
聴き馴れたシャブリエの「ブーレ」も光彩陸離たる巧緻なケックラン編曲で耳にすると味わいは倍増だ。いつも聴いている編曲はフェリックス・モットルの手になるのだという。知らなかったなあ!
それにも増して興味津々なのは、シューベルト「さすらい人」の管弦楽版だろう。そんな編曲版が存在することすら知らなんだ。ただし、こちらの仕事は色彩感に乏しく、響きもくぐもっていて必ずしも成功とは云い難い。ライナーノーツに曰く、
1933年、ケックランはバレエ・リュスの監督(Dirigent)ボリス・コフノからシューベルトの「さすらい人幻想曲」ハ長調の管弦楽用編曲の註文を受けた。ジョルジュ・バランシンによる "ファンテジー・コレグラフィック" 「さすらい人 L'Errante」上演のためである。ケックランは1933年3月にスコアを書いた。バレエ初演は同年6月10日、パリのシャンゼリゼ劇場で行われ...
ここまで読んで思わずアッと声に出しそうになった。
「1933年」、「コフノ」、「バランシン」、「パリ」───ここまでキーワードが出揃うと、これはもう只事でない。文中にあるバレエ・リュス云々はもちろん誤りで、このときケックランに編曲を依頼したのは、バレエ・リュスの残党たちが係わった史上最も短命だったバレエ団「
バレエ1933 Les Ballets 1933」のことに相違あるまい。
(まだ聴き出し)