(承前)
もはや朧げな幻影でしかないベルリン体験を長々と綴ってきたのは、今たまたま東京でやっている展覧会に触発されたという表向きの理由のほかに、彼の地から風の便りに伝わってきた不穏な噂のせいもある。
その展覧会にはフェルメールの一枚を除いては、昨日ここで列挙した選り抜きの煌びやかな「綺羅星」たちは含まれていないらしい。
それもまあ無理もあるまい。16世紀初頭までの西洋絵画の多くは板に描かれており、その画面の脆弱さ故に館外貸出は厳しく制約されているからである。本来そうした至宝を観るには千里の道を遠しとせず「こちらから出向く」のが礼儀というものだろう。ついでに附言するなら、そもそも「何某美術館展」と称するものは一種の欺瞞であり、輸送に伴う危険を冒してまでやる代物ではないと思う。
この話題はのちの機会に回すとして、目下ベルリンの国立美術館では解決の難しい厄介な問題がもちあがり、その帰趨を巡って上を下への大騒ぎなのである。
(まだ書き出し)