先日(8月23日)冒頭の一曲を聴いて力尽きた形になっていたCD感想。そのあと何度も繰り返し全曲を味わっている。稀少なケックラン編曲作品を続けざま聴けるばかりか、近来稀にみる秀演なのである。指揮者ハインツ・ホリガー恐るべし。
"Charles Koechlin: Magicien orchestrateur"
クロード・ドビュッシー(シャルル・ケックラン編):
バレエ音楽「カンマ」
キャサリン・アーナー(シャルル・ケックラン編):
遠い波の上で
ガブリエル・フォーレ(シャルル・ケックラン編):
劇音楽「ペレアスとメリザンド」*
フランツ・シューベルト(シャルル・ケックラン編):
バレエ音楽「さすらい人」**
エマニュエル・シャブリエ(シャルル・ケックラン編):
気紛れなブーレ
ハインツ・ホリガー指揮
シュトゥットガルト南西ドイツ放送交響楽団
ソプラノ/ザラー・ヴェーゲナー*
ピアノ/フロリアン・ヘルシャー**
2010年11月2~5日、シュトゥットガルト、南西ドイツ放送(SWR)スタジオ
2010年11月8日、ジンデルフィンゲン、市会堂(「カンマ」「気紛れなブーレ」)
Hänssler CD 93.286 (2012)
二曲目「遠い波の上で Sur les flots lointains」の原作者
キャサリン・アーナー Catherine Urner (1891~1942)は作曲を志す米国女性でケックランの年若い弟子。両者は秘かな恋愛関係にあったという(彼女のことはずっと以前に話題にした。
→シャルル・ケックランの秘められた情事)。まさか彼女の作品を聴く日が来ようとは思わなかった。彼女の歌曲を師匠が管弦楽編曲(1933)した僅か五分の可憐な小品だが、背後の事情を知る者には興味津々である。
続く「
ペレアスとメリザンド」は本作品集で随一の聴きものだ。
フォーレはこの芝居の倫敦上演用に付随音楽を書いたのだが、編曲にあたってはオーケストレーション能力に長けた助手ケックランに白羽の矢が立って・・・という経緯はよく知られていよう。ただし現行の楽譜はそれを更にフォーレ自身が再編曲したものだそうで(寡聞にして知らなんだ)、初演時のオリジナル楽譜(劇場ピットで奏した人数は十八名)はアルフレッド・コルトーやナディア・ブーランジェらの手を経て、今はフランス国立図書館に秘蔵される由。今回ホリガーが指揮するのは、その原典版の世界初録音なのである!
(9月19日に続く)