ようやく肩の荷が下りたので心おきなくプロムズ三昧、と思ったところ途端に躓いた。期待して拾い聴きした「
四つの最後の歌」がなんとも無惨な出来なのだ。
Prom 5: Strauss, Saariaho & Sibelius
on 17 July 2012
Royal Albert Hall
Richard Strauss:
Four Last Songs
Anne Schwanewilms, soprano
BBC Philharmonic
Juanjo Mena, conductor
独逸のソプラノ、アンネ・シュヴァネヴィルムスはシュトラウス歌手として世評の高い人。「四つの最後の歌」も大の得意らしく正規盤だけでも二種類ある...。しかもここ、英京ロイヤル・アルバート・ホールこそは1950年5月22日、この曲がフラグスタート独唱、フルトヴェングラー指揮で世界初演された場所なのだ...。
そんな乏しい予備知識で聴き始めると、どうも様子がおかしい。冒頭の「春」からしてまるで声が伸びず、どうにか最高音(ハイB)は凌いだものの、随所に綻びだらけ。続く「九月」も著しく生彩を欠いた。一体全体どうなっているのか。
三曲目の「眠りに就こうとして」でカタストロフが到来した。万感まさに極まろうとする直前で急にオクターヴ下になり、そこから先は高音のコントロールを失ったまま歌唱は失調迷走し、破綻また破綻の連続となった。可哀想で鑑賞に耐えない。なんとか最後まで歌い終えたものの、不測の事態に聴衆も些か茫然自失の有様だ。
ディーヴァとて生身の人間なのだから声の不調は儘あることだ。
小生の乏しい経験でも何度か遭遇した。エレナ・スリオティスは『ノルマ』を一幕のみで降板し、ジューン・アンダソンやキャサリン・マルフィターノがリサイタル途中で声を失い立往生する場にも居合わせた。ドーン・アップショーにもあった。
なんとも気の毒なのは当夜の一部始終がそのまま世界中にオン・エアされてしまったことだ。生中継だから致し方なかったとはいうものの、シュヴァネヴィルムス嬢の名誉のため再放送は中止できなかったものか。