目覚めると足腰がひどく怠い。脹脛が痛い。喉がしわ嗄れている。昨夕ずっと立ちどおしで絶叫した報いだろう。
枕元のラジオを点けたらピーター・バラカン氏の「
ウィークエンドサンシャイン」がちょうど始まったところだ。なんとなく耳を傾けていると、
ザ・バーズ The Byrds の曲が続けざまにかかった。一曲目の「
ミスター・タンブリン・マン」の冒頭でいきなり昔に引き戻される。1965年、というから中学一年の時分、粗末なトランジスタ・ラヂオから流れていたあの音だ。当時はまだ作者ボブ・ディランの名すら知らなかった。
続く「
ターン・ターン・ターン Turn! Turn! Turn!」は日本では翌66年になってからヒット・チャートに登場したと思う。所謂「赤丸急上昇」という奴で、頻繁にラヂオでかかったから、呪文のように繰り返される「ターン、ターン、ターン」の響きが耳に焼きついた。未知のハーモニーの魅力に、子供ながらぞっこん参った(
→これ、
→シングル盤)。
そのあとバラカン氏はジェリー・ゴフィン&キャロル・キングの提供曲「
ゴーイン・バック Goin' Back」やら、ケネディ大統領を悼んだ「
友達だった彼 He Was a Friend of Mine」やら、バーズのまるきり知らない楽曲をたて続けにかけた。最近になって出た全シングル盤集成アルバムからの紹介だという。
聴いた記憶がないのは日本でヒットしなかったのかも知れないし、そもそも小生は中三の終わりの68年にポップス少年を卒業してしまったから、それ以降の曲にはとんと馴染がないのだ。
「
ターン・ターン・ターン」は不思議な雰囲気を醸す曲である。フォーク歌手ピート・シーガーの作品だそうだが、詞はなんと旧約聖書から採られたというから驚きだ。
To everything―turn, turn, turn
There is a season―turn, turn, turn
And a time to every purpose under heaven
A time to be born, a time to die
A time to plant, a time to reap
A time to kill, a time to heal
A time to laugh, a time to weep
To everything―turn, turn, turn
There is a season―turn, turn, turn
And a time to every purpose under heaven
A time to build up, a time to break down
A time to dance, a time to mourn
A time to cast away stones
A time to gather stones together
To everything―turn, turn, turn
There is a season―turn, turn, turn
And a time to every purpose under heaven
A time of love, a time of hate
A time of war, a time of peace
A time you may embrace
A time to refrain from embracing
To everything―turn, turn, turn
There is a season―turn, turn, turn
And a time to every purpose under heaven
A time to gain, a time to lose
A time to rend, a time to sew
A time for love, a time for hate
A time for peace, I swear it's not too late!試みに手許の古いバイブルを繙くと確かにこうある(「伝道の書」三の一)。
天が下の萬の事には期あり 萬の事務(わざ)には時あり
生るゝに時あり死るに時あり 植るに時あり植たる者を抜くに時あり
殺すに時あり醫(いや)すに時あり 毀つに時あり建るに時あり
泣くに時あり笑ふに時あり 悲むに時あり躍るに時あり
石を擲つに時あり石を斂(あつ)むるに時あり 懷くに時あり懐くことをせざるに時あり
得るに時あり失ふに時あり 保つに時あり棄るに時あり
裂くに時あり縫ふに時あり 黙(もだ)すに時あり語るに時あり
愛しむに時あり惡むに時あり 戰ふに時あり和ぐに時あり 語順をほんの少し入れ替えただけで、元になったソロモン王(だとされる)の詩句と殆どおんなじだ。あらゆるヒット曲のなかで間違いなく最古の作詞であろう。驚いたなあ。なにしろ紀元前10世紀(!)の作なのだから。
(明日に続く)