處用で上京した序でに吉祥寺を再訪、ちよつと立ち寄つた中古音盤店の樂譜棚に見も知らぬ逸品を發見した。題して「ピアノと管絃樂の爲の幻想曲」、何と名指揮者
ポール・パレー若き日の作曲である。此れは相當な掘出物ぢやないか。
Paul Paray:
Fantaisie pour piano et orchestre
Réduction à deux pianos par l'Auteur
Éditions Jobert
1926
いやはや參つたなあ。事もあらうにパレーの樂譜だなんて。讀譜も覺束ない身には稀少な譜面もさながら猫に小判、豚に眞珠、馬の耳に念佛の類ひなのだ。
何はともあれ、出會つたが百年目、何かの縁だらうと一も二も無く手に取り、大事に抱へて持ち歸つたといふ次第。
元の協奏作品は1909年の作と云ふが、初演はずつと後の1923年。ピアノ獨奏はマルセル・シャンピ(イヴォンヌ・ロリオやエリック・エドシークの恩師。岸惠子の義父だつた事もある)、指揮は勿論パレーの率ゐるラムルー管絃樂團だ。此の譜面は作曲者自身に據る二台ピアノ用の編曲。流石に初版ぢや無く1957年の再版だつたが、其れとても半世紀以上も前の刊行だ。
一體全體どんな曲なのだらうか。樂譜を前にして途方に暮れる。所詮ずぶの素人には寶の持ち腐れ。無意味な買ひ物だつたかも知れないぞ。
いや待てよ、と思ひ直す。ポール・パレーのピアノ作品だつたら確かCDを架藏してゐた筈だ。書庫の奥を探索したら矢張りあつた。數年前、ライナーノーツ執筆の參考に米國から取り寄せた "
Paul Paray: Complete Works for Solo Piano" と云ふ二枚組。その冒頭に件の「ピアノと管絃樂の爲の幻想曲」は收録されてゐるではないか。しかもちやんと管絃樂の伴奏附きだ。今夜は此れを聽かう。