いかにも訳知り顔で、今朝の投稿に「
それにしても本盤のように『選ばれた乙女』と『夜想曲』とが同じアルバムに収まるのは案外と珍しいのではないか」などと書いたが、とんだ勇み足。いや~迂闊であった、あるのですな、これが。実は拙宅の書庫からも一枚ひょっこり見つかった。なんともはや。
"Debussy: Nocturnes, La Demoiselle élue,
La Martyre de Saint Sébastien"
ドビュッシー:
夜想曲*
選ばれた乙女**
聖セバスティアヌスの殉教(交響的断章)***
ソプラノ/ドーン・アップショー**
メゾソプラノ/パウラ・ラスムッセン**
ロサンゼルス・マスター・コラール女声合唱団* **
エサ=ペッカ・サロネン指揮
ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
1993年2月22日* **、11月16日***、
ロサンゼルス、カリフォルニア大学ロイス・ホール
Sony SK 58 952 (1994)
仏国と米国とで申し合わせたように同時期に「夜想曲」と「選ばれた乙女」の二曲を収めたアルバムが録音されたのは不思議な偶然である。この二曲をわざわざ選んで組み合わせたのは、どちらの企ても慧眼だった。
ただし演奏の流儀は大きく異なる。薫りたつような情緒よりも細部の彫琢に重きが置かれ、思い入れを排した入念緻密なドビュッシーを浮き彫りにする。より今日的な行き方といえようし、合奏能力もこちらが格段に上だ。「選ばれた乙女」の歌唱もサロネンの意図を反映して、あくまで感情過多を排した冷静なスタイル。アップショーは些か取り澄ましてクールに過ぎるほどだ。
「
聖セバスティアヌスの殉教」は管弦楽部分のみ繋いだ二十分弱の抜粋。神経の行き届いた精妙な演奏に舌を巻く。四時間かかる全幕のほんのさわりだから如何にも物足りないが、全部を聴くと退屈至極。ほとほと難しい曲なのだ。