吉田秀和さんが亡くなられたという。絶句するほかない。同時代を生きる私たちにとって取り返しのつかぬ損失である。水戸芸術館のHPから訃報を引く。
音楽評論家で文化勲章受章者の吉田秀和 水戸芸術館館長が、5月22日午後9時、急性心不全のため、鎌倉市雪の下の自宅で急逝いたしました。享年98歳。
故人の意向により、密葬(喪主 長女清水眞佐子さん)を24日に執り行いました。
以上謹んでお知らせ申し上げます。
※なお、ご香典、ご供花、ご供物につきましては、故人の意向に従いご辞退申し上げます。
※後日、「お別れ会」を執り行う予定です。会の日時、会場等が決まり次第改めてお知らせいたします。
平成24年5月27日
いつまでもお元気だったし、お書きになる文章にも老いや衰えの翳は微塵もみられなかった。つい先日も月刊文芸誌「すばる」に伊藤整の思い出を綴っておられたし、「レコード芸術」の巻頭エッセーにも相変わらず健筆を揮っておられた筈だ。だからなんとなく百歳になってもきっと現役で活躍されるに違いないと信じ込んでいた。
一昨日、たまたま時間潰しに書店で久方ぶりに「レコ芸」を開き、吉田さんの連載「之を楽しむ者に如かず」を立ち読みしたのは、蟲の知らせだったのかしらん。
晩年(という表現をお赦しいただきたい)の吉田さんはむしろ昔よりもずっと秀逸な書き手になられたのだと思う。往時の鼻もちならぬ気取りやペダントリーが影を潜め、研ぎ澄まされた透明な文体だけが残った。一年半ほど前に読んだ吉田さんの文章「《春を信じて》」に寄せた感想をとりあえず引こう(
→シュトゥッケンシュミットの妻)。