昨晩のこと、就眠する前に家人がポツリ呟いた。朝TⅤの海外ニュースを観たら、たまたまパブロ・ピカソの大作の話をやっていた由。なんでも滅多に観られぬ珍しい絵だそうで、画面にはピカソの奥さんのバレリーナ姿が描かれ、自らも猿として登場する、そんな構図の作品なのだという。
一体全体なんの話なのやらサッパリ要領を得ず戸惑ったが、はたと気付いた。ははあ、それはディアギレフの依頼でピカソが1917年に手掛けたバレエ・リュスの新作「
パラード」のための緞帳のことぢゃあないのか(
→これ)。もしそうだとすると、この作品なら東京で実物を観た憶えがある。間近に「観た」というよりも遙かに「見上げた」と云ったほうが正確かも知れない。なにしろ巨大な作品なので、遠くからでないと全体が見渡せない。縦10.5、横16.2 メートルもあるのだそうだ。
こういうときの知恵袋はリチャード・バックル。鈴木晶さんの訳から引く。
素朴な、だが十九世紀の見世物小屋の飾りつけのような旧式なスタイルの、ピカソの緞帳は、それが上がったときにあらわれるキュビスムの新奇さを、なんら予感させるものではなかった。縁どるように真赤な幕、そして木立、廃墟、ヴェスヴィウス火山の遠景が描かれ──これらはすべて舞台装置にするつもりだったのであろう──、七人の風変わりな人物が右手のテーブルを囲んでいる──闘牛士、アルルカン、修道僧、ターバンを巻いた黒人、船乗り、そして二人の少女。左手では、飼葉桶を前にした、翼のはえた白いペガサスの上にのったシルフィード=曲馬師が、理髪店のポールのような赤白青の縞模様の梯子から、猿を抱きとろうとしている。[...]
この「シルフィード(風の妖精)」に扮した有翼のバレリーナをピカソの恋人(翌1918年に妻になる)オリガ・ホフローワ、梯子上の猿をピカソ自らの化身とする解釈がどこまで信憑性のあるものか寡聞にして知らないが、少なくも家人の観た英語ニュースはそう報道したらしい。"NHK World" のHPにはたしかにこうある。
Picasso's largest painting back on show
Pablo Picasso's largest painting -- a 16-meter-wide stage curtain
-- will go on show in France for the first time in 21 years.
The curtain was painted as a backdrop for the 1917 ballet Parade,
for which Picasso designed the costumes and sets.
At over 16 meters wide and 10 meters high, it is Picasso's largest
known work. The painting has been stored in the Pompidou Center
in Paris for lack of space to hang the work. It will now be displayed
in the center's sister museum in Metz, France.
The painting features a monkey on a ladder said to be Picasso. A
woman in a white dress is said to be Olga Khokhlova, who danced
in Parade and later married Picasso.
May 24, 2012 - Updated 03:06 UTC (12:06 JST)
パリのポンピドゥー・センターはこのピカソ最大の作品を所蔵しながら、展示スペースがないため一度も公開したことがない由。宝の持ち腐れとはこのことだ。今回、姉妹館たるメッスのポンピドゥー分館での展覧会に貸し出され、仏国内では久方ぶりに展観されることになった(その展示作業は
→これ →これ →これ →これ →これ )。
メッスのポンピドゥー分館での展覧会はずばり「
1917」と題されたなかなか意欲的な内容のものらしい(
→美術館HP)。昨日から開催。ううむ、遠いよなあ。そもそも何処にある街なのかすら詳らかぢゃない。せめてカタログ位は入手したいものだ。