昨年のこと、別室の書庫を引き払う際あらゆる所有図書をやむなく「要」と「不要」とに振り分けた。刊行年度が1956年以後のものは原則として「不要」と判定したので大半のセンダックを放り出す仕儀と相成った。
だから手元には初期の数冊の絵本のほかは殆ど何もない...筈だったのだが、何事にも例外はあるもので、数日前に挙げた楽譜集 "Lullabies and Night Songs" "Maurice Sendak's Really Rosie" のほかにも、マザー・グースに取材した絵本やら、ヤナーチェクの歌劇「
利口な小さな雌狐」の絵本化やら、「かいじゅうたち」の初邦訳本「
いるいるおばけがすんでいる」やら、少なからぬ書目が今なお拙宅にあることが判明した。なんともはや往生際の悪い人間であることよ。
今日も書庫からこんなアイテムを発掘した。センダックの代表作を朗読した録音集。美麗な紙箱にカセットテープが四本入っている。
"The Maurice Sendak Soundbook"
Where the Wild Things Are
In the Night Kitchen
The Nutshell Library
■ Alligators All Around
■ One Was Johnny
■ Pierre
■ Chicken Soup with Rice
Very Far Away
The Sign on Rosie's Door
Kenny's Window
Higglety Pigglety Pop!
Really Rosie (stage musical version)*
Narrated by Tammy Grimes (1976, 1977)
Performed by the Broadway Cast (1981)*
Music by Wolfgang Amadeus Mozart and Carole King*
Caedmon audio-cassette Soundbook SBC 124 (1990)
こんな箱物をいつどこで入手したのか。美術書専門店「NADiff」の値札シールが貼ってある。しかも千五百円也。それでたっぷり三時間以上、LP発売時には四枚分にあたる内容が収録されているのは格安だ。バーゲンか何かだったのか。
ここでしか聴けない「
リアリー・ロージー」舞台ミュージカル版が値千金だが、本セットの眼目はあくまでも朗読にある(Caedmon はその専門レーベル)。センダックの代表的な絵本のテクストが纏めて完全な形で聴けるのは有難いことだ。
ナレーションはすべて同じ
タミー・グライムズ。舞台とTVの人なので馴染がないが米国では誰もが知る著名な女優・歌手の筈だ(
→こういう人だ)。ハスキー気味の低い声だが味のある朗読ぶり。媚びたところのないクールな語り口がいい。
今日はそこから「
ヒグルティ・ピグルティ・ポップ!」を聴こう。自立を求めて旅に出た飼犬ジェニーの波乱万丈の冒険譚を語る。魅惑の三十分余。
何? ちょっと聴いてみたいって? ならばこっそりお裾分けしよう(
→これ)。
伴奏音楽はモーツァルト(グラスハーモニカのためのロンド、「フィガロ」序曲)。初出時にLPのアルバム・カヴァーで自分の名がモーツァルトと並んだのを見てセンダックは有頂天になったそうな。さもありなん。