午後からは空模様が怪しいというので家人に早かされ朝から外出、南青山の根津美術館でここの所蔵する「
燕子花図屏風」とメトロポリタン美術館の「
八橋図屏風」が同時に並ぶ展示を観に行った。そもそもメトロポリタンの「八橋図」を実見したことがあったかどうかも記憶があやふや。1973年に上野で「琳派展」があったとき観たように思うのだがもはや不確かだ。あれは抱一の描いた模倣作のほうだったかも知れぬ。いずれにせよ光琳の姉妹作が一堂に会するのは1915年以来なのだという。まさしく千載一遇の機会である。
ひどい混雑を予想していたら平日だからだろうか会場は思いの外すいている。遠方近方から矯めつ眇めつ鑑賞。仔細に比較観察すると両者の燕子花の花弁がまるで別筆のように異なった描法なのに吃驚した。遠い昔、学校の授業ではメトロポリタン本が若描き、根津本が円熟期の作と教わった気がするのだが、今の定説は反対にメトロポリタン本を晩年の作とし、両者の制作期には十数年の隔たりがあるとする。今日つぶさに実見するとたしかに「八橋図屏風」に細部描写も構図全体も一日の長が感じられ、こっちこそ円熟期の作と思いたくなる。まあどのみち素人の考えなのだが。ともあれ甲乙つけ難い名品を見較べつつ心ゆくまで堪能、至高の時を過ごす。眼福とはこのことだ。何を措いても観るぺし。
一時間ほど観たら喉が渇いたので別棟の瀟洒なカフェで一服。珈琲も茶菓も美味しい。そのあと美術館の庭をゆっくり散策。池の燕子花も満開だったのが嬉しかった。帰路すぐ近傍の古書日月堂に立ち寄って、サティの楽譜集「
スポーツと気晴らし」作曲者署名入りという珍品(
→これ)を拝見。先客もおられたので長居は無用、お茶を頂戴し早々と退散。外に出たら雨粒がポツリ、慌てて地下鉄の駅に駆け込んだ。