明けて五月三日は指揮者
エヴゲニー・スヴェトラーノフの命日。もう歿後十周年なのだという。
生前はその芸風にどうしても馴染まず、一度も実演を聴かず仕舞だったのだから、追悼する資格なぞ殆どなきに等しいのだが、幾ばくかの微かな思い出はある。とりわけロジェストヴェンスキーと並ぶ駿才として売り出し中の1960年代、若きスヴェトラーノフには好もしい印象なきにしもあらず。グラズノーフの第八交響曲(旧盤、モスクワ放送交響楽団を指揮したもの)など、実に瑞々しい素直な演奏だったという記憶が鮮烈にある。もう四十数年も聴いていないのだが。
つい最近、そんな大昔の聴取体験を裏書きするようなスヴェトラーノフの面目躍如たる若き日の爽演が遂に覆刻された。嬉しいなあ。
"Overtures by Russian Composers"
グリンカ:
「ルスランとリュドミラ」序曲
ボロディン(グラズノーフ編):
「イーゴリ公」序曲
ムソルグスキー(リムスキー=コルサコフ編):
「モスクワ河の夜明け」 ~「ホヴァンシチナ」序奏
リムスキー=コルサコフ:
「サトコ」序奏
「五月の夜」序曲
「皇帝の花嫁」序曲
「プスコフの乙女」序曲
エヴゲニー・スヴェトラーノフ指揮
ボリショイ劇場管弦楽団
1963年、モスクワ
Мелодия MEL CD 10 01824 (2011)
まことに天馬が空を駆けるが如き、どこにも逡巡や躊躇のない直情的で胸のすくような快演の続出ぶりに、「この指揮者は只者ぢゃあるまい」と幼いながら予感した田舎の高校生の直観は正しかったのだと今にして思う。
(まだ聴きかけ)