今日も暖かい一日。散歩の途中たまたま路上で出張販売中の豆腐屋から生湯葉を入手。夕餉の卓に並べたら旨いのなんのって。濃厚でとろりとした口当たりが絶妙。これは癖になる風味だ。
新発見のアルバム。先日マヌエル・デ・ファリャのアンソロジーCD(
→これ)で感心したスペイン指揮者エンリケ・アルボスを纏めて聴いてみたら滅法いい。
"Enrique Fernández Arbós conducts
Arbós & other Spanish composers"
デ・ファリャ:
組曲「三角帽子」第二番
アルベニス(アルボス編):
セビーリャの聖体祭 ~「イベリア」
トリアーナ ~「イベリア」
港 ~「イベリア」
グラナードス:
スペイン舞曲 第六番
「ゴイエスカス」間奏曲
トゥリーナ:
交響詩「ロシオの行列」
アルボス:
アラビアの夜
ブレトン:
ポロ・ヒターノ
アルハンブラにて
アルベニス:
ナバーラ
トゥリーナ:
夢想 ~「幻想舞曲集」
饗宴 ~「幻想舞曲集」
エンリケ・フェルナンデス・アルボス指揮
マドリード交響楽団
1928年4月、マドリード王立劇場
Dutton CDBP 9782 (2008)
エンリケ・フェルナンデス・アルボス(1863-1939)はもはや伝説の遙か彼方に遠ざかった音楽家だろう。アルベニスやファリャの親友で、前者のピアノ曲集「イベリア」を管弦楽編曲し、後者の「スペインの庭の夜」を世界初演した──知られているのは大方まあ、そんなところだろうか。ラヴェルがイダ・ルビンシュテイン夫人の依頼でアルベニスの「イベリア」を管弦楽編曲しようとして、既にアルボス編曲があると知って断念し、しぶしぶオリジナル曲を書いた──「ボレロ」である──という逸話でその名が言及されるだけの幻の存在なのだ。
そのアルボスの指揮したスペイン近代音楽が旧いSP録音に僅かだが遺っていて、こうして Dutton の魔法のような技術で覆刻再生してみると、なんと、どれもこれも目の醒めるような秀演揃いなのに驚嘆。ファリャの「三角帽子」組曲も、グラナードスの「ゴイエスカス」間奏曲も、息を呑むほどの名演奏。絶品というほかない。今の今まで知らなかった不明を詫びたい気持ちである。
1863年生まれということはマーラーやドビュッシーと同時代人(アルボスは作曲家でもあった)、指揮者仲間ではワインガルトナーやメンゲルベルフとほぼ同世代だから、ロマン主義の残滓を残した旧弊な指揮者という予感がするが、聴いてみると案に相違してなんともすっきりモダンな指揮ぶりに吃驚。明快なリズムと色彩感覚、インテンポを基調とするきびきびした展開は四つ年下のトスカニーニに近く、後続世代のモントゥーやブッシュやアンセルメに先駆ける。さすが近代音楽の推進者として名を馳せ、スペインで初めてストラヴィンスキーの「春の祭典」を振った指揮者だけのことはある。永年にわたる手兵であるマドリード交響楽団 La Orquesta Sinfónica の力量も当時の巴里や倫敦の楽団に遜色ない。