京都の田中泰子さんから研究誌『
カスチョール』の最新号が送られてきた。ロシア児童文化研究サークル「カスチョールの会」を仲間たちと結成して二十年になったのを記念した特別号だという(
→内容はこれ)。
一口に二十年というが、高邁な理想を掲げ、志を曲げずに雑誌を出し続けるのは並大抵の労苦ではなかったろう。「カスチョール Костёр」とは焚火のこと。その呼称どおり、心のなかに情熱の火を燃やし続けた二十年間だったと想像する。
本当はちゃんと購入しないといけないのだが、小生も二十周年を寿ぐ短いメッセージを寄せたので、ご恵贈くださったのだろう。その文章をここに再録する。
小生が貴会の存在を知ったのは2004年春、「幻のロシア絵本 1920-30年代」展が始まり、芦屋で田中友子さん [註/田中泰子さんの娘さんで「カスチョール」同人] にお目にかかってからなので、やっとまだ七年。もっと早く出逢えていたら展覧会にもご協力を仰げたのに、と悔やまれます。あの展覧会は芦屋市立美術博物館が吉原治良(よしはらじろう)旧蔵の絵本コレクションを生かすべく、「すぐにでも実現させたい」と急かされて計画したため、今思うとちょっと準備不足。それでも望外の反響が得られたのは、ひとえに当時のロシア絵本の素晴らしさの賜物だと痛感しています。あれから間もなく、芦屋の美術館は閉館の瀬戸際に追いやられ、学芸員も全員が退職を余儀なくされたので、今になって振り返ると、あれがラストチャンスだったのですね。ひどい時代。つくづく溜息が出ます。
在野の収集家なので、あまり偉そうなことは言えませんが、貴会の地道で粘り強い活動にはいつも敬服しています。とりわけ1920年代の児童雑誌「ハリネズミ Ёж」「マヒワ Чиж」の翻訳・覆刻は目覚ましい企てだと思います。さて、一読者として今後の貴会に望むのは、より世界的な観点からロシア児童文化を再考することですね。マルシャーク、チュコフスキー、レーべジェフ、ツェハノフスキーらはみな、他国の文化からも多くの富を得て、あれだけの仕事を成し遂げた。その顰みに倣って、これからの研究者たちは従来のようにロシアのみに自閉せず、より広い視野に立ってアプローチすべきでしょう。期待しています。
いやはや、最後のところで偉そうに苦言を呈しているのが恥ずかしい。誌面では「お祝いの言葉」が五十音順に掲載されたので、小生の文章は沼野充義教授のすぐあと、対向頁にはユーリー・ノルシュテイン(!)の祝辞がある。今になってどっと冷汗。
(まだ書きかけ)