夜半近くにプーランクを聴くというのも奇妙なものだが何やら癖になってしまったようだ。今日も棚の奥から取り出した珍しい一枚。
"Francis Poulenc: Works for Orchestra"
プーランク:
バレエ組曲「動物のお手本」
バレエ組曲「牝鹿」
将軍の演説、トルーヴィルの浴女たち ~バレエ「エッフェル塔の花婿花嫁」
行進曲1889、田園の間奏、行進曲1937 ~1937年パリ万国博覧会
マルチェッロ・ヴィオッティ指揮
バーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団
1989年2月、1990年7月、バーデン=バーデン南西ドイツ放送局スタジオ
Claves CD 50-9111 (1991)
どれもこれも1960年代末にジョルジュ・プレートルという名の若き俊英指揮者のLPで聴いて好きになった曲ばかり。云わば懐かしの音楽をドイツのオーケストラで聴き直すのはちょっと躊躇した。しかも指揮はイタリア系スイス人だ。さして期待もせず聴き始めたら驚くほど秀逸な演奏なので魂消てしまう。
この指揮者は完全にプーランクを自家薬籠中のものとしている。溌剌と弾むリズム、屈託なく歌う旋律、羽目を外すようでいて上品に締め括られるユーモア。オーケストラにフランス的な馨りが乏しいのが難だが、まあ昨今はパリの楽団とて同断だから文句は云えまい。とにかく極上のプーランク解釈がここにある。しかもヴィオッティの創り出す音楽には生の舞台を彷彿とさせずにはおかぬ臨場感が満ち満ちていて、これら楽曲の出自が紛れもなく証される。とりわけ滅多に聴く機会のない戦時下のバレエ音楽「
動物のお手本 Les Animaux modèles(「典型的動物」とも)」が光彩陸離とした目覚ましい出来。忘れさられるには惜しい音楽である。
マルチェッロ・ヴィオッティは一度だけ生を聴いたように思う。来日もしたらしいが、遭遇したのはなんと旅先のミュンヘン。仕事の合間に招待され「ガスタイク」という大ホールでミュンヘン・フィル(だったか放送交響楽団だったか)の定期演奏会を聴いた。1996年末のことだ。もはや記憶が曖昧なのが残念だが、ストラヴィンスキーのバレエ「妖精の接吻」がノスタルジックな味わいが濃くて大層よかった。あのときの指揮者が確かヴィオッティではなかったか。プログラムをしまい込んだので判然としないが、どうもそうだった気がする。
(まだ聴きかけ)