やけに暖かいと思つたら日中は攝氏十六度もあつたさうな。春のやうな陽氣に心も和む一日。デスクワークも彈みがついて何時に無く捗る。環境に影響され易い體質なのだ。浮き立つ氣分に乘つて
アーヴィング・バーリンのソング輯でも聽かうか。
"Blue Skies: Songs by Irving Berlin"
01. Remember
02. That Mesmerizing Mendelssohn Tune
03. Blue Skies (originally interpolated into Richard Rodgers' "Betsy")
04. Call Me Up Some Rainy Afternoon
05. Russian Lullaby
06. I Love a Piano (from "Stop! Look! Listen!")
07. You'd Be Surprised (from "Ziegfeld Follies of 1919")
08. Say It Isn't So
09. Let Yourself Go (from "Follow the Fleet")
10. Lazy
11. At The Devil's Ball [final version]
12. Falling Out Of Love Can Be Fun (from "Miss Liberty")
13. What'll I Do?
14. Manhattan Madness (from "Face the Music")
15. Let's Face the Music and Dance (from "Follow the Fleet")
16. The Song Is Ended
17. Let Me Sing and I'm Happy (from "Mammy")
メゾソプラノ/ジョーン・モリス Joan Morris
洋琴/ウィリアム・ボルコム William Bolcom
1985年6月、紐育、亞米利加文藝硏究翰林院
Electra Nonesuch 9 79120-2 (1990)
久し振りに耳にする
ジョーン・モリス。もう話題にする人も稀だらうが、彼女の唄ふ英語のキャバレー・ソングには格別の味わひがあつて、小生は時に其の声が無性に聽きたくなる。正統的な聲樂敎育を受けた人には違ひ無いのだが、彼女の歌唱は徒にクラシカルな發聲法に走らず、精確で知的な歌ひ方なのに氣取つた厭味がまるで無い。ガーシュウィンやポーターのやうな凝つた書法と異なる、率直で流麗なアーヴィング・バーリンのソングに、ジョーン・モリスの歌はぴつたり嵌る。
云ひ忘れてゐたが、彼女の總てのアルバムで伴奏を務めるのは實生活でのパートナーでもある作曲家
ウィリアム・ボルコム其の人なのだ。彼もまたダリュス・ミヨーの愛弟子ながら、ラグタイムを自らの音樂の根幹に据へたユニークな作曲を心掛け、彼女の爲にキャバレー・ソングを數多く書いてゐる。夫唱婦随ならぬ婦唱夫随の鴛鴦夫婦なのだ。洋琴の偉く達者な人でもある。
今宵ひときは心躍るのは矢張りバーリンがアステーア&ロヂャースの爲に書き下ろしたミュージカル映畫《
艦隊を追つて》からの二曲、「思ひのまゝに Let Yourself Go」と「歌に合せて踊らうよ Let's Face the Music and Dance」なのだ。
昨日と同じく封切時の
清水俊二に據る譯詞を掲げておく。
歌に合せて踊らうよ
苦勞あるとて 月のある間は
愛人(きみ)と二人 唄へや踊れ
鳴るヴァヰオリン 流れゆくメロディ
踊れるうちに 唄へや踊れ
月も隠れて 淋しさせまれば
涙も出よう 月のある間に
愛人と二人 唄へや踊れ
唄へや踊れ
──『映画之友』昭和十一年八月號附録、「映画主題歌樂譜」No.21