つい今しがたグーグル検索をしようとしたらポータル画面で海辺に立ちつくすアントワーヌ・ドワネル少年のモノクロ絵が目に飛び込んできた。勿論あの黒いタートルネックのセーターを纏った姿である。今日は
フランソワ・トリュフォー監督の満八十の誕生日なのだという。日本風に云えば傘寿の祝いだろうが、なんとも意表を突かれた思いがする。老いたトリュフォーという存在がまるで想像できないからだ。彼は五十二の働き盛りで早世したのだし、そもそもいつまでも歳をとらない永遠の映画青年の俤を宿した人だった。生身の監督とじかに接したことはないが、山田宏一さんの書物や、幾多のインタヴューを通して肉声と人柄に触れていたし、その姿もフィルムのなかで何度も目にしていた(《野生の少年》《アメリカの夜》《緑色の部屋》、それから勿論《未知との遭遇》)ものだから、なんだか永年にわたる知己のような気が勝手にしていた。嗚呼、トリュフォーが生きて老年を迎えたなら一体全体どんな映画を撮ったことだろう、見当もつかないな…と詮の無い空想をあれこれ巡らせることしきり。