2月1日。持参した風邪薬でどうにかこうにか発熱を抑え込んだと思ったら、今日はいよいよ倫敦滞在の最終日である。二週間は長かったような、あっと云う間に過ぎたような。何はともあれ別れを告げねばならぬ。
というわけで英国美術に敬意を表すべくテイト・ブリテンを訪問。どうやら常設展示スペースの半分が工事中らしく、いつもなら必ず並んでいるホイッスラーの《バターシー橋》も《白衣の少女》も、ロセッティの《受胎告知》も、ナウム・ガボの抽象彫刻群も観られない。まあ、鍾愛のサージェントの《カーネーション、リリー、リリー、ローズ》が拝めたのでよしとしよう。
ちょっと拍子抜けしたままバスを乗り継いでキングズ・クロスの大英図書館へ。ここで "Royal Manuscripts: The Genius of Illumination" という特別展を観る。12~16世紀の英国の彩飾写本、いずれも国宝級の書物をずらり百冊余り並べた壮麗な展示である。まあ小生などには豚に真珠なのだが、それでも贅を尽くした豪奢な手仕事に溜息をつく。凄い時代があったものだ。
夕刻になったのでサウスバンクにとって返し、今回の滞在で最後の演奏会に臨む。一連の「プロコフィエフ・フェスティヴァル」の掉尾を飾る一夜である。
"Prokofiev: Man of the People?"
Royal Festival Hall
1 February 2012
19:30-
プロコフィエフ:
交響曲 第一番「古典」
ヴァイオリン協奏曲 第二番*
交響曲 第五番
ヴァイオリン/ジャニーヌ・ヤンセン*
ヤニク・ネゼ=セガン指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
最初の「古典交響曲」はさして特色のない凡演、次の第二協奏曲は音量に乏しく、香気も霊感も欠いた独奏者にがっかり。嗚呼これがフェスティヴァルの結末なのかと諦めかけたら、休憩後の第五交響曲では指揮者も楽団も生まれ変わったかのよう。鋭敏鮮烈なリズム、考え抜かれたフレージング、意味深いアクセント、すべてにおいて瞠目すべき演奏だ。侮るべからずネゼ=セガン。これこそ三週間のプロコフィエフ祭の大団円と呼ぶに相応しい。ブラーヴォ!