所用で竹橋に出向いて帰宅後やっと原稿に取りかかる。身辺多忙につき落ち着いて集中できない。師走だからなのか。
google のポータル画面に拠れば画家ディエゴ・リベラの百二十五回目の誕生日なのだという。今日はこのほか作曲家
ジャン・シベリウス、
ボフスラフ・マルチヌー、
ミエチスワフ・ヴァインベルグ、更にヴァイオリン奏者
ゾルターン・セーケイ、フルート奏者
ジェイムズ・ゴールウェイが生まれた日でもあるらしい。それぞれ百四十六、百二十一、九十二、百八、七十二回目の誕生日になろうか。
ならば聴かねばと棚から取り出したのはこれ。
バルトーク:
ヴァイオリン協奏曲 第二番
ヴァイオリン/ゾルターン・セーケイ
ヴィレム・メンゲルベルフ指揮
アムステルダム・コンセルトヘバウ管弦楽団
1939年3月23日、アムステルダム、コンセルトヘバウ楽堂(世界初演実況)
Philips 426 104-2 (1989)
このような決定的瞬間がよくぞ記録され後世に伝えられたものと感心する。確かオランダの放送局が収録したSP盤から起こされた覆刻だったと思う。当日バルトークはこの世界初演の場に居合わせることがどうしても叶わず、亡命後に立ち会ったアメリカ初演(トッシー・スピヴァコフスキー独奏)で初めて耳にしたのだという。
もう七十年以上前の古い録音で相応のノイズが入るが、ヴァイオリンの音はしっかり聴こえるし、メンゲルベルフが思いがけず機敏な伴奏を付けているのもよくわかる。バリバリの難解な現代音楽の初演だというのに終わるや否やブラーヴォと盛大な拍手。流石アムステルダムの聴衆だ。
ゾルターン・セーケイ Zoltán Székely はハンガリー四重奏団のリーダーとして知られる名手だが、この協奏曲初演のあと一時期メンゲルベルフの下コンセルトヘバウの第一奏者を務めたこともある。 彼については伊東信宏さんの評伝『バルトーク 民謡を「発見」した辺境の作曲家』(中公新書)に優れた紹介があった筈だ。