ちょっと調べごとでgoogleのポータルを開くと、どこかで見たような異形の者たちがずらり雁首を揃えている(
→これ)。
懐かしきマペットたち。今日は
ジム・ヘンソンの七十五回目の誕生日なのだという。1936年9月24日生まれの彼は1990年5月16日、五十三の働き盛りで急逝した。直前まで旺盛に仕事をしていたというから本人にも死の自覚はなかったろう。全く惜しいことをした。
ジム・ヘンソンといえば「
セサミ・ストリート」。大学一年の1971年の冬休みにNHKで放映されたのを観て好きになり(日本での初放映は半年前の夏休みだった由)、72年春から毎週放送されるようになると英会話のためと称してテキストまで買い揃え熱心に視聴した。まだ黒人若夫婦
ゴードンと
スーザン、にこやかな白人
ボブの三人が主役格でレギュラー出演し、ドラッグストアの老店主
フーパーさんが元気に働いていた頃である。ボブ役のボブ・マグラスはわれわれの世代では知らぬ者とていない。かつて不二家のCMで一世を風靡した甘い声の人気歌手だったからだ。
「セサミ・ストリート」で驚かされたのは貧しいマイノリティの子供たちへの眼差しだ。スタジオに造られた仮想のNYの一郭「胡麻通り」は黒人やヒスパニックが住む庶民的な街角に設定され、さまざまな人種の子供たちが賑やかに集っていた。
登場する人形たちもひと癖もふた癖もあるような連中ばかり登場した。好んで塵芥缶に住む気難し屋
オスカー。菓子をねだってばかりいる強欲な
クッキーモンスター。いかにもひ弱でお人よしの蛙
カーミット。ボケとツッコミの好一対
アーニーとバート。大柄で総身に知恵の廻りかねる
ビッグバード。これら愛すべきキャラクターの創造こそがジム・ヘンソンの真骨頂なのである。ドン・ガバチョと海賊トラヒゲが井上ひさし最大の創造物であるのと事情はそっくりだ。ジム・ヘンソン御大はたしかカーミットとアーニーの操りと声まで自ら務めていたのではなかったか。
その後のヘンソンの旺盛な活躍についてはあまり多くを知らない。少しのちのTV番組「マペット・ショー」は未見だし、映画ではデイヴィッド・ボウイの出た《ラビリンス/魔王の迷宮》(1986)を観たきりで、《ダーククリスタル》(1983)は見逃してしまっている。そうそう、ルイス・キャロルのモデルになったアリス・リデルにまつわる後日談《ドリームチャイルド》(1985)に登場するハンプティ・ダンプティその他のキャラクターはヘンソンのデザインだったと記憶する。
「セサミ・ストリート」は音楽面での充実も目覚ましかった。誰もが知るカーペンターズの「シング」はこの番組から生まれたものだし、毎回のように豪華なゲストが訪れた。ちょっとだけ覗いてみようか(
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