昨日から池袋の新文芸坐で
原田芳雄の追悼連続上映が始まっている。副題して「日本映画アウトロー ぶっ飛ばせ」。たまたま上京の機会があったので駆けつけた。なにしろ日替わり二本立なので油断できない。
われに撃つ用意あり
松竹
1990
監督/若松孝二
原作/佐々木譲
脚本/丸内敏治
出演/
原田芳雄、呂秀菱(ルー・シュウリン)、桃井かおり、石橋蓮司、蟹江敬三 ほか
寝盗られ宗介
松竹
1992
監督/若松孝二
原作・脚本/つかこうへい
撮影/鈴木達夫
出演/
原田芳雄、藤谷美和子、久我陽子、筧利夫、佐野史郎、山谷初男 ほか
同じ若松監督作品なのに全く性格を異にする二本。
前者は1990年の新宿歌舞伎町を舞台とする実録風ハードボイルド・アクション。全共闘世代の二十年後の再会を縦糸に、暴力団から追われるヴェトナム娘を匿う話を横糸にドラマが紡がれるが、脚本がひどく生硬で興を殺がれる。
68年闘争で逮捕歴をもつ原田が営む歌舞伎町のスナックに昔の仲間たちが集って…という展開は《セコーカス・セブン》《再会の時》に連なる「同窓会ムーヴィ」を予想させるが、寡黙な店主役の原田はともかく、他の面々の科白や性格づけが余りにも空疎でお粗末。世代的共感が徒となったか、若松演出も空回りしている。
同じことは娘を追跡して原田と対立する新宿闇社会のヤクザたちの類型的な描写にも当て嵌まる。強面の役者をそれらしくただ揃えただけ。それを取り締まる刑事役の蟹江敬三もコロンボもどきの役作りで鼻白む。なにもかも安易な絵空事なのだ。
もう一作は同じ若松監督作品ながら何から何まで前作とは趣を異にする。そもそも
つかこうへいの主人公を原田芳雄が演じ、それを若松孝二が演出するなんて誰が予想しただろうか? しかもそれが存外にいいのである。
しがない旅回り劇団の座長が恋仲の看板女優に何度も裏切られ、座員と駆け落ちされて悶え苦しみつつも、その帰還を待ち望む…という、つか定番の自虐的な設定なのだが、それを原田は嬉々として演じている。トニー谷さながら派手でチープな衣裳がなんとも可笑しいし、相方の藤谷美和子との相性も実によろしい。
そういえば原田は《八月の濡れた砂》で教会の神父役で戯画的な役に挑んでいたから、格好いいアウトロー以外の役柄にも意欲があった筈だが、ここまで喜劇的な演技がサマになるとは思わなかった。新境地を拓いたという意味で当人にとっても劃期的な一本であろう。監督は最初《ストリッパー物語》の映画化を志し、原田の主役で是非…と望んだが映画化権を取得できず、次善の策としてこの題材に挑んだのだという(先日の『キネ旬』特集での若松証言)。う~ん、原田芳雄の「銀ちゃん」も観てみたかった気がする…。
映画のクライマックスは劇中劇の歌謡ショーで「越路吹雪の弟(?)」という奇妙な役柄で原田が女装して唄う「
愛の讃歌」である。恐らく元のつかの芝居にもある趣向なのだろうが、原田の歌には愛する者の哀歓がしみじみ籠っていて笑いながら涙が出る。蓋し絶唱というべきだろう。この歌を聴けるだけでも本作は値千金である。