日付が変わってしまったが、9・11の催しに参加してきた。今回がもう五回目になる「素人の乱」主催の反原発デモである。
集合場所の新宿アルタ前に着いてみたら、出発地点は新宿中央公園に変更されたという。直前になって警視庁の横槍でコース変更を余儀なくされた由。官憲の遣り口はことほど左様に姑息で陰険である。
すでに参加者とおぼしき若者が集合している。この人だかりで知った顔を探すのは至難の業──と思いきや、いきなり旧友
みやに出喰わす。痛めた足の具合がだいぶ回復したので参加を決めたのだという。この場所に居ても詮方ないので連れだって地下道を抜け西口方面へ。炎天下をとぼとぼ公園を目指し十数分ほど歩く。
出発時間まで半時間ほどあるが、公園にはもう数百人が屯している。ここでも知った顔を探すが誰とも出会えない。反原発バッヂを頒けてもらい胸に飾り、片隅の木蔭で汗を拭い一息つく。禁煙中の
みやについ煙草を勧めてしまう。
出発時刻は予定の三時をかなり回っていた。
みやと小生は第三グループに加わって歩く。年齢も性別も出自もまちまちの混成集団なので一向に気勢が上がらず、一時はどうなることかと案じたが、角筈を通過し新宿駅南口に差し掛かるあたりから俄然シュプレヒコールに熱が籠もってきた。小生も持参した赤いメガホンで声を限りに原発反対を訴える。道行く人の反応はまあ相変わらずだ。
このあと隊列は明治通りから靖国通りへと繁華街を進み、ガードを西側へ抜けて出発地点の中央公園へ戻るコースを進むのだが、暑さと渇きに苛まれた初老二人組はガード手前で列を抜け、駅近くの居酒屋で喉を潤した。なんとも情けない仕儀だが、熱中症で斃れるよりはましだろう。
実は珈琲でも飲もうと店を探したのだが何処も満員だったので仕方なく「七時まで麦酒と酎ハイ二百円!」の惹句に引き寄せられ「三平酒寮」という店に入った次第。渇き掠れた喉を潤すためと称して、酒の肴も碌に頼まず空きっ腹に見境なく水分補給したので、短時間で二人ともフラフラになる。制限時間の七時が近づいたところで我に返り、デモの終結地点たるアルタ前までとって返す。足許が覚束ない。
警官隊の過剰警備を掻い潜って千鳥足で進むと、ヨドバシカメラ東口店附近の人だかりに旧知の
あらかわ君とそのお仲間、それにI am a Kamura のヴォーカリスト
カムラアツコさんの姿を発見。あな嬉し。よく逢えたなあ。この大群衆のなか知人と遭遇するのは砂場で宝石を探すより難しい。それも文明の利器を用いずにだ。
しばし立ち話。
あらかわたちは公園近くの歩道橋から暫くデモ行進を撮影したのち、あちこちの隊列を取材して廻った由。
カムラさんは途中からデモに加わったとのこと。凛とした彼女の表情を拝した途端に酔いが醒め背筋がしゃきっとした。これから所用があるという姐御とはそこで別れ、そのまま少し居残っていたらビクトル・ハラの「
平和に生きる権利」が聴こえてきた。演奏は無論
ジンタらムータだ。取り巻く人垣越しに姿は見えず音だけ拝聴。実にいい。やっぱりデモには音楽がなくちゃね。