今日はパーシー・グレインジャーの百二十九回目の誕生日。いかにもキリの悪い年数だし、そもそも今年は2月20日に五十回忌を済ませたばかり。
その折には拙グログでもあやかって十回連続でグレインジャーとのささやかな馴れ初めを綴った(「
パーシー・グレインジャー事始」
→その1、
→その2、
→その3、
→その4、
→その5、
→その6、
→その7、
→その8、
→その9、
→その10)。
だからもう云うべきこともないし、推奨すべきディスクも自作自演からサイモン・ラトルに到る十二点、更にベンジャミン・ブリテンの慈しむような秀演(レヴューは
→ここ)まで、あらかた紹介し尽くした。
そう思ったのだが、グレインジャーの誕生日にその音楽を聴かない訳にはいかぬ。
どうした訳か、上にリンクした記事で言及しながら、きちんと紹介しそびれた重要なディスクがあることに気づいた。今日はそれを聴こう。
"Music of Percy Grainger"
パーシー・グレインジャー:
素朴な舞曲、東洋風間奏曲 ~「若々しい組曲」
楽しい鐘の音
スプーン・リヴァー
私のロビンは緑の森へ
緑の茂み
カントリー・ガーデンズ (アドルフ・シュミット編)
モリスもどき
若々しい歓喜
シェパーズ・ヘイ!
ウォーキング・チューン
岸辺のモリー
ストランド街のヘンデル (ヘンリー・ウッド編)
ケネス・モンゴメリー指揮
ボーンマス・シンフォニエッタ
1978年3月、ドーセット、クライストチャーチ・プライオリー
Chandos CHAN 8377 (1985)
グレインジャーに冷淡だったLP時代にあって、この管弦楽小品オムニバス集の存在は貴重だった。はじめRCAから "Grainger: Orchestral Works" (RL25198)として1979年に出たあと、何故か Chandos レーベルが権利を譲り受け1985年に再発したもの。ちょうどLPとCDの端境期だったため両方のフォーマットで出た。叢に留まった青い蝶々をあしらったアルバム・カヴァー・フォトが懐かしい(
→これ)。
指揮者ケネス・モンゴメリー(モントゴメリー?)はまるで馴染の薄い人だが、1943年北愛蘭ベルファストの生まれ。エイドリアン・ボールト卿、ジョン・プリッチャード卿、ハンス・シュミット=イッセルシュテットに師事。グラインドボーン歌劇場で修業したのち、1973年からボーンマス・シンフォニエッタの音楽監督を暫く務めた。その後はオランダでの活動が主であるらしい(以上は彼のHPとウィキ情報)。
何よりも選曲が秀逸。収録時間の制約から Youthful Suite が抜粋なのが玉に瑕だが、いずれもグレインジャー自身の管弦楽譜(かそれに近いもの)に依った至極まっとうな演奏。際立って個性的な解釈ではないものの、それぞれの曲の良さをさりげなく引き出した佳演である。光と空気を満喫しながら野を歩くような爽やかさがこのディスクの身上だろう。アンサンブルも悪くない。
その後 Chandos レーベルは壮大なグレインジャー新録音集成 "The Grainger Edition" 全十九巻を出したので、このアルバムは継子扱いされがちだが、今でも "Percy Grainger: Famous Folk-Settings" なる標題で入手可能らしい(米アマゾンでは)。これから聴いてみようかな、という方には「グレインジャー早わかり」盤としてお薦めできる。少なくも小生はこれでグレインジャーに魅了されました。