餘りの暑さで茫然自失しているうちに何時の間にか七月になつてゐる。家人が温度計を見るなり今朝は八十五度もあると云ふものだからすつかり魂消てしまふ。華氏の目盛を讀んでゐたのである。
今日もまた汗みづくで部屋の片付けに追はれる傍ら、せめて耳から英國の涼風をば取り入れやうといふ魂膽である。アルバム・カヴァーもかく床しい(
→これ)。
"British String Miniatures 2"
ヘンリー・パーセル(アーサー・ブリス卿編): 幕間曲・舞曲集
ピーター・ウォーロック: フレデリック・ディーリアスの誕生日の爲の小夜曲
ギャレス・グリン: アングルシー島のスケッチ
フレデリック・ディーリアス: エアとダンス
マシュー・カーティス: 小夜曲
エドワード・エルガー卿(パーシー・ヤング編): 組曲『西班牙の淑女』
フィリップ・レイン: 協奏風小夜曲
ギャビン・サザーランド指揮
ロイヤル・バレエ・シンフォニエッタ2001年9月26日、11月16日、2002年2月6、7日、
ロンドン、ソニー・ミュージック・ステュディオズ
Sanctuary Classics/ White Line CD WHL 2136 (2003)
英國近代の絃樂合奏曲を取り揃へたアンソロジーの第二輯。鍾愛の小品であるウォーロックの小夜曲(私淑してゐた先輩ディーリアスの還暦祝に捧げた)やら、その被献呈者ディーリアスの「エアとダンス」やら、エルガーの未完の歌劇から編まれた組曲やらといつた馴染の曲に、まるで知らない作曲家の樂曲が織り混ぜてあるのは前輯と同じ趣向。長閑で古雅な英國風景を懐かしむのに恰好の一枚と云へよう。
明記されてはゐないが、このアルバム・カヴァーもケムブリッジのケム川を冩した古冩眞だらうと見當をつけたら、矢つ張りさうだ、今でもこれと殆ど變はらぬ風景が望めるらしい(
→これ)。何とも羨ましいお國柄である。
序でに同じくアンソロジーの第三輯も倂せて聽かう。
"British String Miniatures 3"
ギルバート・ヴィンター: 娯樂曲
エドワード・エルガー卿: 嘆息(ソスピーリ)
ピーター・ウォーロック(フィリップ・レイン編): 四つの民謡前奏曲
ジョン・フォックス: 田舎組曲
ヘイ・マーシャル: 悲歌
シリル・スコット: 絃樂の爲の第一組曲
ギャレス・ウォルターズ: シンフォニア・ブレーヴェ
ギャビン・サザーランド指揮
ロイヤル・バレエ・シンフォニエッタ2001年9月26日、11月16日、2002年2月6、7日、
ロンドン、ソニー・ミュージック・ステュディオズ
Sanctuary Classics/ White Line CD WHL 2139 (2003)
流石に知名度の高い曲は尠くなつてゐるが、それ丈に却つて未知の樂曲に出會へる歓びが増す。ヴィクトリア朝バラッド、民謡(ロング、ロング、アゴー)、童謡を竝べたシリル・スコット作品なぞ、半音階的進行がうつとりする程に魅力的である。
アルバム・カヴァーはこれもカム川の情景に違ひない(
→これ)。あゝ川風が涼しい。