あの日から早三箇月が経った。目覚めると朝から篠つく雨。午後には降り止むとの予報を心頼みに傘を持たずに家を出る。一時間半後の新宿はすっかり雨が上がり、雲間からときおり薄日が漏れる。これなら大丈夫そうだ。
4月10日の高円寺、5月7日の渋谷に続く「脱原発デモ」の第三回目はここ新宿が舞台である。南口から出て都庁の高楼を目指して早足で歩くこと十数分。思いのほか遠く汗が噴き出す。途中コンビニで水分を補給。二時きっかりに集合場所の新宿中央公園に到着。ちょうど主催者の挨拶が始まったところだ。
マイクの大音声に恐れをなし人垣の後方で聴いていたが、やがて
ジンタらムータ+ちんどん有志の面々が登場したので最前列に進み出てしゃがんで傾聴。ふと脇を見やると間近からヴィデオ撮影する男がいる。友人の
荒川君ではないか。そのあと
藤波心がアカペラで「ふるさと」をしみじみ唄うのを聴き、
制服向上委員会なる純然たるアイドル・グループの脱原発ソング(!)に目を丸くする。
三時過ぎにデモ出発。過剰な数の警官隊に恐れをなしつつ今回もジンタらムータの面々のあとに続く。われわれの一隊は恐らく第二グループだろう、都庁の脇を抜けて新宿駅方面へ向かい、途中で左折して駅前広場を掠めるように過ぎ、靖国通りのガードを潜って歌舞伎町界隈や花園神社を左に見ながらゆるゆると進む。雨上がりの空気は爽やかだが、湿度でやがて肌が汗ばんでくる。
その間、楽隊は馴染のレパートリー「不屈の民」「平和に生きる権利」「ウィ・シャル・オーヴァーカム」「アメイジング・グレイス」を繰り返し演奏。同行の面々は実にもの静かで、シュプレヒコールは殆どなし。チンドンで賑やかに先導されるわりに気勢の上がらぬ地味な連中だが、それでも思い思いに手造りのプラカードで沿道に意思表示。明治通りに入ったあたりからは「ジンタら」のリーダー
大熊亘さんが時折マイクを持ってデモの趣旨をアピールした。
道行く人々の反応は概ね傍観的ながら、前回、前々回に較べると少しは好意的にも思える。それだけ事態が深刻化し原発への危機感が浸透したということか。やがて隊列は甲州街道に入り、新宿駅南口手前で陸橋下を潜って東口方面へ。見馴れた街並だがデモ行進しながら眺めるといつもと違って見えて新鮮だ。
終着地点の新宿アルタ前に到着したのは五時十五分頃か。全長三、四キロの道のりをたっぷり二時間かけ歩いたことになる。このあと集会があるというのだが後続グループはまだ未着。中古レコード屋で小一時間過ごしたあと再びアルタ前に戻ると手狭な広場は群衆で一杯、絶叫と喝采が入り混じって騒然たる雰囲気だ。デモ参加者は約二万人とのアナウンスが聞こえた。列をなして包囲する警官の数も半端でない。こんな新宿を見るのは初めてだ。1968年以来か。
この大群衆のなかで知人の姿を探すのは至難だが、幸い旧友の
おらが君から携帯に連絡が入り、なんとか逢うことができた。撮影取材をあらかた終えたという
荒川君もここで合流。暫くその場に居残ったが、歩き疲れた初老三人組にはもう若者のようなパワーは残っていない。
どこかで喉を潤そうと衆議一決、混雑を避けて地下道で西口側へ抜け、昔馴染の手頃なジャズバー「Vagabond」に腰を落ち着かせる。ふう疲れたわい。