昨日は早稲田の演博を辞去してからも、綺羅星の如き品々を目にした昂奮と、纏まりのない意図不明な展示への落胆と、二様の感情の入り混じった玉虫色の気分で学内を抜け、駅に向かう道すがら、ふと思い立って新刊書店に足を踏み入れた。
人文書の棚で見慣れぬ書名と著者名が目に入った。何気なく手に取ると五百頁もある高価な本だ。パラパラ頁を繰るうち、すぐさま内なる直感が蠢き出し、こう命じた──「これはなんとしても読まねばならぬ」。すぐにか? 「そう、今すぐにだ」
武藤洋二
天職の運命
スターリンの夜を生きた芸術家たち
みすず書房
2011
帯の惹句を引こうか──「史上初の社会主義型実験国家の下、困難と恐怖が人間の深部をあらわにする。生存と創作の根底にあるものは何か。天職を目印に追う壮烈なスターリン期文化論。」
(まだ書き出し)