夜中なのに眠れず、イヤホンで音楽を聴いている。永らくしまい込んでいたディスクだったのだが、改めて耳にすると思いがけず名演揃いで吃驚。
"Barbirolli - Hallé Favourites"
ヴェルディ: 歌劇『運命の力』序曲*
マスカーニ: 歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』間奏曲**
ポンキエッリ: 歌劇『ラ・ジョコンダ』より 「時の踊り」***
ロッシーニ: 歌劇『ヴィルヘルム・テル』より バレエ音楽**
マスネー: 菩提樹の木の下で ~「アルザスの風景」***
シャブリエ: 愉しい行進曲***
ジャーマン: ネル・グウィン舞曲(三曲)****
グレインジャー:
シェパーズ・ヘイ!
岸辺のモリー
アイルランド、デリー州の調べ
モリスもどき
シェパーズ・ヘイ! (ステレオ試験録音セッション) *****
ジョン・バルビローリ卿指揮
ハレ管弦楽団
1957年5月3日****、5月29日*****、6月12日*、8月11日***、
1958年9月4日**、
マンチェスター、フリー・トレード・ホール
Dutton-The John Barbirolli Society CDSJB 1006 (1996)
マーラーとエルガーとヴォーン・ウィリアムズ、それにディーリアス…。バルビローリは決してそれだけの人ではなかった。恐ろしくヴァーサタイルな指揮者だったのだと今更のように痛感させられる。演奏会のアンコールに相応しい管弦楽小品ばかり集めたこのアルバム(ビーチャム卿の顰に倣うなら「ロリポップ」)は、バルビローリが指揮台に立ったロンドンの「プロムズ」の曲目を彷彿とさせる。主としてEPのために録音された音源であるらしい。原盤は Pye レーベル。
激情を叩きつけるようなヴェルディ、切々と胸中を歌い上げるマスカーニ、珍しいロッシーニのバレエ音楽、いずれもイタリア人を父にもつバルビローリの出自を思い出させる名演だ。シャブリエの「愉しい行進曲」の気合いの入れ具合も尋常でない。ちょっとポール・パレーみたい。バルビローリはフランスものも得意にしていたのだ。
そして最後の
パーシー・グレインジャー。(新発見のステレオ・セッション一曲を除き)モノラル録音なのが残念だが、沸々と湧き上がる生命力の発露が素晴らしい。バルビローリは間違いなくグレインジャーの神髄を捉えている。この録音を作曲者は聴くことができただろうか。