昨晩は寝床で「荻大ノート」の新着記事を読んだり、拙ブログの書きかけの旧稿を仕上げたりで夜更かし。なので朝寝坊したかったのだが家人に揺り起こされる。天気がいいので小旅行に出掛けようという。慌てて支度をする。
温かい飲み物を手に九時半の電車に乗る。といっても下りホームから乗車し、内房線に乗り継いで房総半島を南下する。同じ千葉県でも半島の先はとんと不案内。かねてから訪ねてみたかった。ここ数日の暖かさで花盛りに違いないと家人は云う。
内房線の眺めはえらく単調だ。海沿いに工業地帯が延々と続き、殺風景な建売住宅群ばかり目につく。駅名こそ「姉ヶ崎」「長浦」「袖ヶ浦」と情緒たっぷりだが、車窓の風景はまるきり没個性で面白味を欠く。
ところが君津駅を過ぎたあたりから景色は俄かに一変し、里山と畑が一体となった豊かで長閑な田園風景が続く。やがて佐貫町駅を過ぎると、右の車窓に海岸線が迫ってくる。青く凪いだ海は雄大で、見馴れた地元の人工海浜からの眺めとは(悔しいけど)雲泥の差だ。山並が海に迫っているのでトンネルが多くなる。トンネルをひとつ抜ける度に一歩ずつ奥深い自然の懐に分け入る感じがする。
ひときわ高く立ちはだかる鋸山をトンネルで抜けると
保田駅。ここで下車する。
鄙びた駅舎を背に海側に出るが、寂れた商店街を抜けると踏切を渡って山側へ歩を進める。駅前の案内所で手渡された地図を頼りに少し行くと、そこは「
水仙ロード」の入口だ。
「水仙祭り」は一月末で終わっているから、もう花盛りは過ぎたのだろうが、道の左右のそこここに可憐な水仙が群生する。路傍にも畦道にも休耕田にも、まるで雑草のようにさり気なく、至るところに咲き競っている。素晴しい眺めである。空は程良く晴れ、陽光が肌に暖かい。もう春の陽気としか思えない。十五分も歩くとうっすら汗ばんできて、コートもマフラーも不要になった。
道は緩やかな上り坂である。「水仙ロード」と命名されてはいるが、もともとある農道をそう呼んでいるだけで、遊歩道ではないので、時おり自動車が行き過ぎる。それがちょっと興醒めではあるが、それを除けばごく静かな田舎道である。低くなだらかな里山と、段々になった棚田からなる眺めは、安野光雅画伯の水彩画さながら、まさに絵のような風景だ。
(まだ書き出し)