懸案の連載原稿が昨日なんとか仕上がったのでホッと一息。それも束の間、新年早々に録ったインタヴューのテープ起こし(←疾うに死語か)。三十分を聞き取りつつ纏めるのに半日を要する。これは相当にしんどい作業である。
昨日に引き続き、追悼のため
ユーグ・キュエノーを聴く。フランス放送に残された貴重な録音である。
"mémoire vive - Hugues Cuénod"
ギヨーム・ド・マショー: 甘き淑女よ*
作者未詳: 恋人たちのレー*
作者未詳: Appris ai qu'en chantant plour*
ハンス・ザックス: 銀の調べ**
ハインリッヒ・イザーク: インスブルックよ、いざさらば***
クローダン・ド・セルミジー: 花咲くときを生きる限り***
オルランド・ディ・ラッソ: わが心はそなたを求め***
モンテヴェルディ: 独唱のための恋文***
ダウランド: もし私が急がなかったら***
ダウランド: 淑女にお誂えの逸品***
ハイドン: 精霊の歌****
シューベルト: さすらい人が月に寄せて****
シューベルト: 秋****
シューマン: 君は花のように****
シューマン: わが麗しの星****
ブラームス: テレーゼ****
フォーレ: 秋****
フォーレ: ニンフの神殿で****
フォーレ: いとも甘き道****
デュパルク: 恍惚****
デュパルク: 悲しき歌****
テノール/ユーグ・キュエノー
リュート/ジョエル・コーエン***
ピアノ/ローズ・デュボス****
1960年8月7日、ロワイヨーモン大修道院(実況)*
1976年5月28日、パリ、フランス放送局104スタジオ(実況)** ***
1980年2月、ジュネーヴ****
INA 262020 (1995)
ここにはユーグ・キュエノーの真骨頂というべきレペルトワールの精髄が集められている。ギヨーム・ド・マショーからモンテヴェルディに至る古歌曲こそは、戦前から彼が
ポリニャック伯爵夫人マリー=ブランシュや
ナディア・ブーランジェの許で復興に努めた音楽である。そしてドイツとフランスのロマン派歌曲の数々。
なんというヴァーサタイルな歌手だろう。しかも若い頃、彼はウェスト・エンドとブロードウェイで
ノエル・カワードのミュージカル『ビター・スウィート』の舞台に立ち、シャンゼリゼ劇場でクシェネクのジャズ・オペラ『
ジョニーは演奏する』にも出演したというのだから恐れ入ってしまう。
彼のディスクのうち最も手に入り易いのがこれだろう。しかも選り抜きの歌唱がここで聴ける。お奨めせずにいられようか。
キュエノーは18世紀の城館に最愛のパートナーたるアルフレッド・オーギュスタンと共に隠棲し、2007年スイスの法令が同性結婚を認めるや直ちに正式な婚姻関係を結んだという。幸せに包まれた最晩年だったと思う。謹んで冥福を祈る。