よく晴れた穏やかなクリスマス。しかも週末である。
硝子越しの陽射しはポカポカ暖かく感じられるが、先程から地元の管理組合の巡視に付き添って一時間ほど外気に晒されたら、体が芯まで冷え切ってしまった。
昨日に引き続き、この時節に相応しい音楽を引き続き聴いている。何かバッハでもと思うのだが、降誕祭のためのカンタータを集めたアルバムが見つからないので、必ずしもクリスマスゆかりの作品ではないが、こんなディスクをかけてみる。
"Johann Sebastian Bach: Tönet, ihr Pauken!"
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ:
小ミサ へ長調 BWV 233
カンタータ 「太鼓よ轟け! 喇叭よ響け!」 BWV 214
フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮
コレギウム・ヴォカーレ・ヘント
ソプラノ/シビラ・ルーベンス
アルト/ステファニー・ハウトゼール
バス/トーマス・バウアー
トン・コープマン指揮
アムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団
ソプラノ/デボラ・ヨーク
アルト/アネット・マーカート
テノール/イェルク・デュルミュラー
バス/クラウス・メルテンス
2003年6月8日、7日、メルク、シュティフツキルヒェ(実況)
ORF Edition alte Musik CD 365 (2004)
どちらも広く知られた声楽曲ではないが、どこかで聞き憶えがあるように感じるのは、多忙だったバッハならではの楽曲転用・再使用の故だろう。
「ミサ・ブレヴィス」の冒頭の合唱は
ロ短調ミサの「キリエ」に出てくるし、末尾の合唱「聖霊とともに」は降誕祭用の
カンタータ「
神の御子の現れ給いしは」(第四十番)の冒頭からの転用である。
とりわけ聴きものは次の世俗カンタータ「
太鼓よ轟け! 喇叭よ響け!」だろう。
始まった途端、おゝこれは!と誰しも驚かれるだろう。名高い
クリスマス・オラトリオのあの胸の高鳴るように悦ばしい始まりと全く同一(歌詞が違うだけ)なのである。実をいえばこちらのカンタータのほうがオリジナル、あちらは一年後の「使い回し」なのである。その証拠にオラトリオ冒頭で太鼓と喇叭が高らかに(だが意味もなく)鳴り響くのは、元のカンタータの管弦楽法をそのまま転用したためである。
というわけで、どちらも降誕祭の祝日用に作曲されたわけではないが、どこかでクリスマスと繋がりをもつ二曲という次第。バッハのこの手の声楽曲における祝祭的な賑々しさは実に好もしいものだ。