またもやリムジンバスで成田空港に赴いた。たまたま先日の倫敦行きと同じ時刻のバスだが、今日の目的は旅ではない。旅立つ人の見送りだ。
リトアニア大使館で文化担当官(アタシェ)を務めた
ガビヤ・ズカウスキエネ女史が三年間の任期を終え帰国の途につかれる。ガビヤさんには2008年夏のブックフェアで全くの偶然から知り合い、チュルリョーニス評伝の刊行や、大使館主催のさまざまなイヴェントを通して親しくなった。
ちょうど一年前、ヴィータウタス・
ランズベルギス氏が来日し、東京でピアノ・リサイタルを催した際は、プログラム・ノートやエッセイを収載した小冊子の編集を担当させていただいた。リトアニアに関しては素人同然の小生がこうした機会を得ることができたのは偏に彼女の推輓のお蔭である。わが恩人といってもいい。
十一月末に何度か彼女のための送別の宴が催されたようだが、生憎こちらは旅に出ていて出席できなかった。そこでせめて空港までお見送りすることで、ささやかな餞としたいと考えたのだ。
ターミナル2の所定の航空会社カウンターで待つこと暫し。十時を少し回った頃合に、荷物を山積したカートを押しながらガビヤさんが現れた。「ヌマベさん」と叫ぶなり、いきなりハグされたのでちょっと赤面。なにせここは日本なのだから。
搭乗手続きが済んで身軽になった彼女と、カフェでニ十分ほど歓談。帰国後はとりあえず首都ヴィリニュスの文化省に身をおいて、今後とも両国の文化交流に尽くすつもりだという。「三年間の滞在だったけど、沢山の日本人と知り合えて、とても稔り多い体験ができました」と流暢な日本語でしみじみ述懐された。
そして「来年こそ是非リトアニアへいらっしゃい! チュルリョーニスの歿後百周年なので、展覧会や演奏会がいろいろありますよ」と唆される。そういわれると行ってみたくなるのが人情だ。どうせなら夏がいいな。
いよいよ搭乗時刻が迫ってきた。名残惜しいが、ヴィリニュスでの再会を誓って、互いに手を振りあって出発ゲートでお別れした。