昨日の午後、
野沢那智さんが亡くなられたそうだ。知らなかった。癌で闘病中だったという。直接お目にかかったことはないが、懐かしい人であることは疑いない。
新聞の訃報は声優としてアラン・ドロン、ブルース・ウィリスの吹き替えを担当したことを挙げているが、小生の世代だと、なんといっても「
デビッド・マッカラム」、すなわちTVドラマ「
0011 ナポレオンソロ」でタイトルロールの相方たるイリヤ・クリヤキン役を演じたデイヴィッド・マッカラムの吹き替えであろう。若々しい美声だった。ちょっとスタイリッシュに気取っていて、でもナイーヴで。1960年代のことだ。
それからなんといっても、TBSラジオ「
パック・イン・ミュージック」の金曜(木曜深夜)午前一時からの「金曜パック第一部」、愛称「ナチチャコパック」で
白石冬美さんとDJを務められたことだ。1967年に「パック」が創始されてから82年に終焉するまでの十五年間、「ナッチャン」「チャコチャン」の名コンビはずっとパーソナリティに留まり続けた。放送史上これは特筆に値する貢献であろう。
あの愉しくて心なごむ「ナチチャコパック」を聴いた勢いで、そのまま寝つけずに三時からの第二部を聴いてしまい、
林美雄さんの「ミドリブタパック」を知った、という方がほとんど(むしろ昔からの林ファンの全員)なのではないか。勿論かく云う小生もそのひとりなのであるが。
野沢那智さんは声優として八面六臂の活躍の傍ら、自ら「劇団
薔薇座」を設立し、ミュージカル・コメディの上演に力を尽くされた。
今ふと思い出したのだが、その一作を確かに観た覚えがある。
『
おお!活動狂時代 バイオグラフガール』といった。D・W・グリフィス、リリアン・ギッシュ、メアリー・ピックフォードらが登場するハリウッド草創期を描いた愉しい舞台だった…と微かに記憶する。調べてみたら池袋のサンシャイン劇場、1990年1月のことという。そういえば終幕のカーテンコールで座長で演出担当の野沢さんご自身もちらと姿を見せたように記憶する。生身の「ナッチャン」にも遭遇していたのだ。
われわれの世代で、ノザワナチなんて知らないよ、という者はひとりもいまい。冥福を心からお祈りする。