NHKの朝の情報番組で
五島列島が特集されている。大小百四十もの島々からなるのだそうで饂飩と牛肉(五島牛)が名産なのだという。五島列島といえば小生はすぐ「
瞳を閉じて」を思い出す。
荒井由実のセカンド・アルバム『ミスリム MISSLIM』に収められた可憐な佳曲だ。
奈留島の県立五島高等学校奈留分校には校歌が存在しなかった。
分校だからといって本校の校歌を歌わされるのは寂しい、私たちの校歌を作ってほしいと在校生の藤原あつみさんが深夜ラジオ番組「毛利久のオールナイトニッポン」に訴えたのを契機に、まだデビューしたてのユーミンが註文に応えて作曲したのがこの歌なのである(それに先立って加藤和彦の曲が作られたが、なぜかこれは没になり、次に白羽の矢が立ったのがユーミンだった、という経緯だったらしい)。
小生がこの歌を初めて耳にしたのは1974年4月5日のこと。
林美雄さんの「パック・イン・ミュージック」にユーミンがテープを持参し、「こんな歌ができました」と披露したのを聴いたのだ(アルバム収録のとは別ヴァージョン)。
いいなあ、ユーミンに校歌を作ってもらえるなんて…と羨ましいなと思ったのを懐かしく思い出す。
そんなことをぼんやり考えながら島の絶景やら饂飩やら和牛やらを眺めていたら、いきなり「瞳を閉じて」の旋律が流れ出したので度肝を抜かれた。
風がやんだら 沖まで船を出そう
手紙を入れた ガラスびんをもって
遠いところへ行った友達に
潮騒の音がもう一度 届くように
今 海に流そう
TV画面にはそのあとユーミンがこの島に赴いて「瞳を閉じて」の歌碑の除幕式に参加した折りの光景がちらと映し出される。1988年9月2日放送「ニュースTODAY」からの映像だろう。
朧げな記憶だが、このとき初めて島に降り立ったユーミンは小高い丘上に建つ学校から海を見下して、思わず「
歌のなかで謳った風景とまるでおんなじぢゃないの!」と述懐したのではなかったか。