すっきり晴れた一日。昨日の疲れを癒しながら過ごす。
読み終えた本も何冊かあるにはあるがレヴューは後日に廻して今夜はまたも秋らしくエルガーのチェロ協奏曲。なんだか莫迦のひとつ覚えみたいだが、たまたま最新録音を手にしたので早速これを聴く。
エルガー:
チェロ協奏曲
ソスピーリ
愛の挨拶
気紛れ女
ドヴォジャーク:
森の静寂
ロンド
レスピーギ:
アダージョと変奏
ヴァスクス:
独奏のための「チェロの本 Grāmata čellam」
チェロ/ソル・ガベッタ
マリオ・ヴェンツァーゴ指揮
デンマーク国立交響楽団
2009年11月9~12日、コペンハーゲン、DR. Byen楽堂
Sony-RCA 88697630812 (2010)
ちょっと前に聴いたナタリー・クライン嬢もそうだが、このソル・ガベッタ嬢もまた申し分のない技量の持ち主である。アルゼンチン出身で欧州に学び、各地のコンクールに入賞という、どこかで聞いたような目覚ましい経歴を経ている由。このエルガーにしても技巧的に不足がないばかりでなく、深い歌もたっぷり。籠められた感情の抑制が利いていて、激しすぎる弊からも逃れた秀逸な演奏である。
だが先のクライン嬢と同様、その反面でここには何かが足りないという微かな不満が燻ぶることも事実。なんというか、欠けているのはやはり作品への帰依と没入、いわば乾坤一擲といった賭けの姿勢だろう。ないものねだりなのだろうか。
クライン盤と同じく、エルガーのサロン小品がアンコール風に三曲ほど附け足されているのは嬉しいような嬉しくないような気分。いずれも編曲物で「愛の挨拶」のアレンジは感心しない。更に二曲ドヴォジャークの小品まで続くのは些かサーヴィス過剰気味。いずれ録音されるであろうドヴォジャーク協奏曲録音まで待てなかったのだろうか。かてて加えてレスピーギまでが駄目押し的に奏される。いかにも流麗な演奏だが、こうして附録ばかり聴かされると肝腎の本体が霞んでしまう。
アンコールはまだ終わらない。ボーナス盤としてラトヴィアの
ペトリス・ヴァスクスの独奏曲までが附く。ガベッタ嬢は三年前に来日してエルガーの協奏曲を披露した際も、アンコールでこの曲の一部を奏したそうだから、恐らく愛奏曲なのであろう。後半では彼女の肉声の歌も加わり、神秘的で玄妙な雰囲気が醸されるが、こうなると結果的にますますアルバムとして収拾がつかなくなる。勿体ない話である。