たっぷり昼寝してしまったせいで昨晩はまるで眠くならず、寝床で取っかえ引っかえCDを聴いていたら空がうっすら白んできてしまった。睡眠二時間半余。
寝不足のままぼんやり「週刊ブックレビュー」を眺めながら濃い珈琲を淹れて、呆けている意識に喝を入れる。
いくつか所用を済ませるべく上京。昼下がりに陽光を浴びて上野公園を歩いても汗をかかずに済む。ようやく秋の気配が深まったようだ。そうなると俄然なんだか足取りも軽くなって、そのまま広小路に出て御徒町方面へそぞろ歩く。
松坂屋を横目で見ながら少し行くと大正二年創業という和菓子の老舗「
うさぎや」が開いていた。昔風の呼称だと「黒門町のうさぎや」という。日本橋や阿佐ヶ谷にもある同名の和菓子屋はここの分家なのだと聞いた憶えがある。
ここはなんでも家人が学生時代に上京してすぐバイトをしていた店だという。当時は木造二階建の古い日本家屋だったはずだが、今は近代的な九階建(だったか)のビルに建て替わっている。まあ四十年の歳月が流れたのだから致し方あるまい。同じ場所でこうして同じお菓子が買えるだけでも奇蹟に近いのである。
せっかく通りがかったのだからと暖簾を潜って、銘菓の「
うさぎ饅頭」と「
どら焼」を求める。どちらもたいそう美味しくて家人の好物なのである。てきぱきと接客する店員さんの応対は見ているだけで快い。店を出てふと振り仰ぐと、軒先にちょこんと載った兎の人形が可愛らしい(
→これ)。いつまでも変わらず続いてほしい店だ。