タンスマンの次はマルティヌーを聴こうか。
"Edition Karel Ančerl: Vol. 8 Bohuslav Martinů"
マルティヌー:
民謡カンタータ「花束 Kytice」(1937)
交響曲 第三番(1944)
カレル・アンチェル指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
チェコ合唱団、チェコ児童合唱団
ソプラノ/リブシェ・ドマニンスカー
アルト/ソニャ・チェルヴェナー
テノール/ルボミール・ハヴラーク
バス/ラディスラフ・ムラーツ
1955年4月30日、1966年11月24日、プラハ、ドヴォジャーク楽堂
Praga PR 254 061 (1996)
同時代をパリで過ごした作曲家ながら、
ボフスラフ・マルティヌー(1890~1959)はタンスマンよりもう少し重厚で晦渋ですらある表現主義的な響きを創り出す。
管弦楽付きの合唱曲集「花束」はストラヴィンスキーやヤナーチェクの感化が見え隠れするが、モダンな書法に土臭い民族の香りが横溢する傑作だ。戦時下に亡命先のアメリカで書かれ、クセヴィツキー指揮のボストン交響楽団によって初演された。暗い時代の影をまざまざと宿している。
未知の実況録音を発掘したPraga レーベル「
カレル・アンチェル・エディション」のなかで本盤には胡散臭さが付き纏う。
チェコ放送アーカイヴ所蔵の1967年9月13日の音源と明記される「花束」は1955年スプラフォン収録の正規録音と独唱者が完全に共通し、間違いなく同一の演奏と思われる。察するに上の日付はこのディスクが再生された放送日を意味するのではないか(同様の誤りはこのレーベルから出た多くのムラヴィンスキー音源でも生じている)。他方、正規録音が存在しない第三交響曲については紛れもなくプラハでの実況であろう。ただしこれとても初出ではなく Multisonic や東芝EMIの Vltava レーベルから出ていた演奏とおそらく同一のものだろう。