のっぴきならぬ所用で上京したついでに西武池袋線の富士見台で下車、久しぶりに旧知のカレー店「
香菜軒」に足を運ぶことにする。ここは店主の三浦夫妻が甲斐甲斐しく切り盛りする小ぢんまりした店なのだが、先日いただいた案内葉書で細君がダウンしたとあったので駅前の生花店で見舞の花束を誂えてもらう。
引戸を開けると厨房ではご夫妻が忙しく立ち働いている。もう体調はすっかり回復したらしい。花束は無意味になったが無論そのほうがいいに決まっている。
時計をみたらちょうど正午。まだ開店から半時間ほどなのに、大テーブルもカウンターもほぼ満席の盛況ぶりである。挨拶もそこそこ、調理の手が片時も休まらない。小生のあとからも三々五々来客が訪れる。
まずは冷やした白ワインを所望し、忙しさの頃合を見計らってアンティパストも註文。「
玉蜀黍とココナッツミルクの冷たいポタージュ」と「
豚のレバーペースト、自家製パン添え」の二品。葡萄酒をちびちび舐めながら待つこと暫し。いつになく時間がかかったが、待っただけの甲斐がある美味さ。ここの前菜はどれも逸品である。
次々に寄せられる註文に応じて店主は厨房を所狭しと動き回る。前菜をあれこれ調理し、各種カレー鍋を火にかけ、プーリー(揚げ麺麭)を捏ねて延ばして油鍋で膨らませる。八面六臂の働きぶりをカウンター越しにただ眺めながら、こちらはのんびり極上の美味を味わうばかり。申し訳ないが気分がいい。
そのあと「
マトンカレー」「
チキンのキーマとひよこ豆のカレー」、付け合わせの有機野菜サラダ、大盛りライス、それにデザート「マンゴーとココナッツのジェラート」、冷たいチャイをいただく。本当は白ワインもお代わりしたかったのだが、次の用事が控えているので今日はぐっと我慢。
二時半になったので再訪を約して店を辞去。噎せ返るような昼下がりの熱気のなか目的地の江古田へと向かった。