東京での用事が思いのほか早く片付いたので予定を急遽変更。
六時から駿河台のアテネ・フランセ文化センターで
井上徹さんの講演を拝聴。演題は「
ジガ・ヴェルトフとロシア・アヴァンギャルド映画」。
ジガ・ヴェルトフはおろか1920年代の初期ソ連映画全般について知るところの尠い小生の蒙を啓いてくれる有益な内容だった。今日の井上さんの話を要約すると、当時のロシア・アヴァンギャルド映画人脈はざっと次の四グループに大別できる由。
1) メジラブポム=ルーシ撮影所 (モスクワ)
レフ・クレショフが開設した映画学校で学んだプドフキン、バルネットらが参集。
2) メイエルホリド周辺 (モスクワ)
メイエルホルドの前衛演劇に感化されながらも、やがて演劇から映画へと転身した面々。エイゼンシュテイン、ユトケーヴィチら。
3) 「レフ」グループ周辺 (モスクワ)
雑誌『レフ』の主力寄稿者だったシクロフスキー、トゥイニャーノフら。芸術理論のほか映画台本も手掛けた。
4) フェクス=エクセントリック工房 (レニングラード)
演劇から映画へと転身。コージンツェフ、トラウベルグら。作曲家ショスタコーヴィチも周辺にいた。工房はやがてレンキノに吸収された。
こうして図式的に整理してみると、当時のソ連映画の見取図が大まかだが俯瞰できる。
ジガ・ヴェルトフはどうやらそのいずれとも異なる道と歩んだ人らしい。それにしても、と深く溜息をつく。まだまだ未見の作品のなんと多いことよ。