同時代の同国人にハイフェッツやオイストラフがいるのでどこか影が薄い印象を抱くのは謂れなき偏見だろうか。小生にとって
ナタン・ミルシテインは「美音で弾くが、さして強烈な個性は感じられない」曖昧な存在のままだった。晩年が素晴らしかったのだという話も耳にするが、その時期の演奏は殆ど聴いていない。要するに縁遠いヴァイオリニストとして今日に至っているのだ。
そのイメージを覆されたのはミルシテインが1950年代中頃にNYで録音した
バッハの無伴奏ソナタとパルティータを聴いたとき。すっきりしていて柔軟で、しかも深い。これは秀逸な演奏だと舌を巻いた。
彼が
プロコフィエフの協奏曲を得意とし、録音を残していることは承知していた(第一番は二度)。二曲を組み合わせたLPは日本盤(東芝EMI)のジャケット・デザインが素晴らしく、拙著にも採り上げたほど好きだったのだが、肝腎の演奏に感心した記憶がない。爾来これを聴き返すことのないまま四十年が過ぎた。
"Great Artists of the Century: Nathan Milstein"
プロコフィエフ:
ヴァイオリン協奏曲 第一番*
ヴァイオリン協奏曲 第二番**
ヴァイオリン・ソナタ 第二番***
ヴァイオリン/ナタン・ミルシテイン
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団*
ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団**
ピアノ/アルトゥール・バルサム***
1962年10月17~19日、65年6月4~7日、ロンドン、アビー・ロード第一スタジオ
1955年1月25日、ニューヨーク、キャピトル・46丁目スタジオ、スタジオA
EMI 4 76862 2 (2005)
(まだ聴きかけ)