予定されていた外出の用件がキャンセルになったので在宅と相成る。
これ幸いと寝転んで音楽をかける。今日も夏に因んだ曲を。前にも何度か取り上げていてなんだか莫迦のひとつ憶えみたいだが、夏といえばやっぱりこれ。
ベルリオーズ:
歌曲集「夏の夜」*
抒情的場面「エルミニア」**
メゾソプラノ/ブリジット・バレー*
ソプラノ/ミレイユ・ドリュンシュ**
フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮
シャンゼリゼ管弦楽団
1994年6月、10月
Harmonia mundi HMC 901522 (1995)
あまた名演が犇めく歌曲集「
夏の夜」のなかで些か地味な印象は否めないが、楚々とした透明な独唱(スイスのソプラノという)といい、古楽器の渋い音色といい、しみじみ曲の良さを味わうのに不足はない。
若き日に「ローマ賞」応募作として書かれたカンタータ
「エルミニー Herminie」は一聴するや度肝を抜かれること請け合いである。なにしろ冒頭いきなり「幻想交響曲」の idée fixe とまるきり同一のものが出てきてしまうのだもの、驚かないほうがどうかしている。曲は二十分を優に超える力作で、禁じられた恋情をときに激しく、ときに瞑想的に謳い上げる。ここから「幻想」まであと僅か二年である。
"Berlioz Mélodies"
ベルリオーズ:
ブルターニュの若い羊飼****
囚われ女**
デンマークの狩人*****
ザイード***
麗しの旅人*
歌曲集「夏の夜」
ヴィラネル****
薔薇の亡霊**
入江の畔*****
君なくて*
墓地にて****
未知の島*
オーバード****
オフィーリアの死**
メゾソプラノ/ダイアン・モンタギュー*
メゾソプラノ/キャサリン・ロビン**
ソプラノ/ブリジット・フルニエ***
テノール/ハワード・クルック****
バリトン/ジル・カシュマイユ*****
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
リヨン歌劇場管弦楽団
1989年4~11月、ペルージュ(アン県)、サント=マドレーヌ聖堂
Erato MUSIFRANCE 2292-45517-2 (1990)
歌曲集といいながら「
夏の夜」は本来ひとりの歌手で歌い通すことを想定していない。六曲がそれぞれ違った声域で書かれているのはそれ故だ。すなわち、
ヴィラネル =メゾソプラノ または テノール
薔薇の亡霊 =コントラルト
入江の畔 =バリトン、コントラルト または メゾソプラノ
君なくて =メゾソプラノ または テノール
墓地にて =テノール
未知の島 =メゾソプラノ または テノール
このように曲毎に男女の歌手が交替しながら歌う趣向は1970年代初頭に登場した
コリン・デイヴィス盤(ソプラノ、メゾ、テノール、バス)が先鞭をつけた手法だが、作曲家の意図に沿うものとして近年それなりに定着し、
ピエール・ブーレーズもこのスタイルで録音する迄に至った。このガーディナー盤は複数の声により各曲jの性格を違いを鮮やかに対比し得た点で、デイヴィス盤をも凌駕する出来映えである。
併せて採り上げられた七曲も、出来に甲乙あるもののベルリオーズ歌曲の卓越した美しさを如実に物語る。これだけの名演奏が今は手に入らぬとは悲しいことだ。
(数日後の追記)
タワーレコードで調べたら、このガーディナー盤は2003年に廉価盤で再発され今も手に入るらしい。いつまであるか心許ないので、見つけたら即入手されたし。