総武本線の四街道駅で降りるのは二年ぶり。四時近いのに陽光はまだ容赦なく照りつけ、全身から汗が噴き出す。十五分ほど歩いて四街道文化センターに到着。
一昨年に続き、ここで「
大野洋子バレエ 第11回発表会」が催される。日本人のバレエを観る習慣のない小生だが、この発表会だけは例外だ。美術館時代の同僚のMさんがバレエ団のメンバーで今回も踊りを披露するというのである。多忙な勤務の合間を縫ってせっせと練習に励んできた成果を拝見しないわけにいかない。
汗を拭き拭き会場に入ると、やはり美術館時代の同僚で今はリタイアしたT氏にばったり。挨拶もそこそこ隣席に腰かけたところで開幕のベルが鳴った。
まだ四、五歳くらいだろうか、バレエ教室に通い始めたばかりのベイビーから、花盛りのバレエ少女、さらにはMさんのようなヴェテラン(失礼!)まで、体格も年齢も技量もまちまちの数十人が入れ替わり立ち替わり踊りを披露。演目を追うごとに難度が増していき、ちょうど十番目にMさんが登場、ソロで「アラビアの踊り」を妖艶に舞う。チャイコフスキー『胡桃割人形』からの一曲である。申し分のない出来だが、惜しむらくはちょっと演目と振付が地味だったか。
休憩を挟んで第二部はチャイコフスキーの『
オーロラの結婚』、すなわち『眠りの森の美女』の第三幕をまるごと上演する。それなりに立派な舞台装置と衣装を誂え、第一部に登場したバレエ団員が総出で演じる。これはなかなかの見ものだった。ご存じのように、この第三幕は筋書は特になく、結婚式の披露宴に客人が次々に踊りを披露するディヴェルティスマン仕立てなので、今日のような発表会にはうってつけかもしれない。それにしてもチャイコフスキーの音楽はよく書けている。祝祭的な晴れがましさが横溢し、どんな小曲にも工夫が凝らされている。ここまでバレエの神髄を極めた作曲家はいないとつくづく思う。Mさんは「宝石の踊り」三人組のひとりとして登場、的確にして優美な手足の動きは修練の賜物だろう。
このあと一転してモダン・ダンス仕立ての第三部が続き、ここでもMさんは十二人の群舞に参加。凄いなあとつくづく感心する。永年続けているとはいえ、ここまで仕上げるには長時間の練習が必要だろう。仕事も家事もこなしながらライフワークに邁進する彼女にはいつも圧倒される思いである。
終演後ロビーに出てきたMさんに挨拶。今年も手ぶらで来てしまった。次回こそは大きな花束を進呈せねばなるまい。