昨日からずっと根をつめたデスクワークが続いて流石に疲労困憊した。このまま眠りに就く前に神経を休めねばなるまい。とっておきの一枚をかける。
フォーレ:
組曲『ペレアスとメリザンド』(ケックラン編)*
夢のあとに(ドゥベンスキー編)**
パヴァーヌ***
エレジー**
組曲「ドリー」(ラボー編)
小澤征爾指揮 ボストン交響楽団
ソプラノ/ロレイン・ハント*
チェロ/ジュールズ・エスキン**
タングルウッド音楽祭合唱団***
1986年11月、ボストン、シンフォニー・ホール
Deutsche Grammophon 423 089-2 (1987)
霊妙な音楽とはこのことだろう、フォーレの精髄を集めたような一枚。これを聴いて心動かされない人はいないと思う。
小澤征爾がいかに丁寧に音楽を紡ぎ出す指揮者であるかが如実に示された一枚。
この人の美質はこうした柔和な繊細さと鋭敏な耳のよさ、絶妙なバランス感覚にあるのだが、ウィーンでの十年間、彼の持ち味がまるで活かされないまま無為に過ごされたかにみえるのは残念というほかない。
それにしても贅沢なアルバムだ。「ペレアス」組曲には通常は奏されない「メリザンドの唄」が含まれ、しかもそこに若き
ロレイン・ハント嬢が起用されるなぞ、夢のような企てである。
パヴァーヌもちゃんと合唱の入ったヴァージョン。絶美とはこれだ。
…とここ迄書いて、当ディスクはこの四月すでに取り上げていたことに気づく。題して「
精緻な絹織物さながらのフォーレ」(
→ここ)。いやはや同工異曲のレヴューになってしまったが、まあ、よかろう。何度聴いても、いいものはいいのだ。