蒸し暑さの極みである。然るに昨日から外の生垣で薬剤散布とやらをしていて窓も開けられない。外気が汚染されているのでエアコンも使えない。いやはや、締め切った部屋に籠もっていると熱中症に罹ってしまいそうだ。
そんな按配でデスクワークもさっぱり捗らない。せめて耳から涼をとろうとフルートとハープの二重奏のアルバムを探し出した。
"Toward the Sea..."
デジレ=エミール・アンゲルブレシュト: ソナティネ (1920)
ジャン=ミシェル・ダマーズ: ソナタ (1964)
ヨーゼフ・ラウバー: 四つの中世風舞曲 (1928)
カルメン・ペトラ=バサコポル: ソナタ (1964)
武満徹: 海へ III (1989)
フルート/ロバート・エイトケン
ハープ/エリカ・グッドマン
1993年9月28日~10月3日、
オンタリオ州エローラ、セント・ジョン・ザ・エヴァンジェリスト聖堂
BIS CD-650 (1995)
ここにドビュッシーの名がないのが不思議なほどに彼の影が色濃い一枚。
云う迄もなくドビュッシーの晩年には
フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタがあるのだが、その影響というか呪縛が20世紀全体に及んでいるかのよう。冒頭の
アンゲルブレシュトと
ダマーズのふたりはフランス人なのでまあ当然だろうが、続く三曲、スイス、ルーマニア、日本と国籍もまちまち、年代的にも隔たった音楽にいずれもドビュッシーが遍在するように感じられるのは驚くばかり。
タケミツの「
海へ」はオリジナルの「I」がフルートとギターの二重奏、「II」がフルートとハープと弦楽合奏、「III」がこのフルートとハープの二重奏用のヴァージョン。正確に云うと用いられるのはいずれの版でも低音のアルト・フルートである。
カナダのフルート奏者
エイトケンは作曲家と昵懇の仲で、「I」の成立にも係わった当事者であり、のちに「I」も録音している。のびやかに緩やかに飛翔するかのような演奏は流石の出来。それにしても美しい、美しすぎる音楽である。瞑目して幻の海景を思い浮かべていると、茹だるような暑さも凌げる気がするから不思議だ。
"Autour de la harpe"
ルーセル: セレナード(フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ハープ)
ロパルツ: 前奏曲、マリーヌとシャンソン(フルート、ヴァイオリン、チェロ、ハープ)
ドビュッシー: フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ
ラヴェル: 序奏とアレグロ(ハープ、弦楽四重奏、フルート、クラリネット)
ケックラン: 五重奏曲 第二番(フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ハープ)
モントリオール・チェンバー・プレイヤーズ
ハープ/ジェニファー・スウォーツ
フルート/ティモシー・ハッチンズ
クラリネット/ロバート・クラウリー
ヴァイオリン/マリアンヌ・デュガル、ジョナサン・クロウ
ヴィオラ/ニール・グリップ
チェロ/ブライアン・マンカー
2004年9月13、14、15日、ケベック州ミラベル、サン=トーギュスタン聖堂
ATMA ACD2 2356 (2006)
こうなるともう本家本元のドビュッシーとその周辺を聴かずにいられなくなった。とりあえず手許にあった一枚。やはりフランス近代音楽においてこそフルートとハープとの相性は抜群だ。とりわけ久しぶりに聴く鍾愛のロパルツ。